2019年8月アーカイブ

子どもたちの未来のために 長崎大会・閉会総会を開催

 

  8月9日、長崎総合体育館・メインアリーナにおいて、被爆74周年原水爆禁止世界大会・長崎大会の閉会総会が行われました。

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 長崎実行委員会の挨拶として、松田圭治・長崎大会実行委員長が、「長崎大会が厳しい国際情勢の中で開催され、多くの議論を重ねた」と現在直面する多数の課題を例に挙げ、核兵器問題だけではなく、多くの課題に取り組まねばならないと述べました。

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 続いて、原水禁・非核平和行進のたすき返還が行われ、長崎の嵩靖文・長崎地区労副議長から沖縄平和運動センター議長の山城博治さんにしっかりとたすきが手渡されました。

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 山城議長は、沖縄の青々とした海の写真を見せながら、沖縄に対する安倍政権の差別政策を例にあげて、現政権に打ち勝とうと会場に訴えかけるとともに、「平和の声を上げていこう」と拳をあげました。

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 会場の端から端まで並んだ高校生平和大使、高校生1万人署名のメンバー150人以上が、この1年間に集めた署名数が20万筆を超えたことを報告してくれました。2018年にノーベル賞へノミネートされたことの報告など、活動が注目されていることがわかりました。

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 海外ゲストを代表し、進歩連帯のソン・ミヒさんが、「朝鮮半島と東アジアの大転換が起きている、保守勢力に負けないようにしなくてはならない。平和憲法をしっかりと守り、長崎と広島の悲劇を繰り返してはならない。」と怒りを込めて力強く発言しました。

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 藤本泰成・大会事務局長が長崎大会のまとめ(全文リンク有り)として、8日に行われた各分科会の要点とそれぞれの今後取り組む課題について、述べました。多岐にわたる課題に、今後の取り組みの強化が求められました。

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 「被爆74周年原水爆禁止世界大会・大会宣言(案)」を、山下薫・長崎大会実行委員長が読み上げ提案すると、会場からは拍手で、大会宣言が採択されました。

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 最後に、則松佳子・大会副実行委員長は「私たちの学びと行動を点で終わらせず、各地でつないでいって下さい。それは子どもたちの未来につながっていくものです」と閉会のあいさつをしました。

 

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 閉会総会後には、県立総合体育館から爆心地公園まで、非核平和行進が行われました。

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 爆心地公園に到着した後、大会参加者は原爆中心碑前に集まり、川野実行委員長、マーシャル諸島からの海外ゲスト、サマンサ・ハナーグさん(REACH-MI副代表)のほか、各団体による献花が行われました。原爆投下時刻である11時2分には、サイレンの合図で、その場にいた全員が黙祷を捧げました。

 

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 被爆者の高齢化に伴い、戦争の記憶の継承が重要なものとなっています。「バーチャルゲーム」の中では、プレーヤーは何度死んでしまっても、生き返ることができます。しかし、現実には、死んでしまった人は二度とかえってくることはありません。被爆74周年を機に、改めて「核兵器のない平和な21世紀」を私たちの手でつくっていく決意をしなければなりません。

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原水爆禁止世界大会・長崎大会のまとめ

 

被爆74周年原水爆禁止世界大会長崎大会まとめ

 

原水爆禁止世界大会実行委員会

事務局長 藤本泰成

 

     被爆から74年目の原水禁世界大会長崎大会も、終わりに近づいてきました。福島、広島、そして長崎と、参加された多くの皆さまに、各分科会でお話しいただきました講師、海外ゲストの皆さまに、そして実行委員会の皆さまのご努力に、心から感謝を申し上げます。少しのお時間をいただき、私なりのまとめをお話しさせていただきます。

 

 第一分科会「日米同盟強化と沖縄」では、ジャーナリストの前田哲男さんから、「82日に生じた2つの危険な情勢」と題する新たなレジメが配られました。韓国の元徴用工が起こしていた裁判の判決に対する、韓国政府の姿勢に不満な安倍政権は、82日、輸出優遇措置いわゆるホワイト国からの韓国除外を、閣議決定しました。日韓関係は深刻な対立の事態を迎えています。

 

 前田さんは、日朝国交正常化連絡会の顧問、和田春樹東大名誉教授などが出した「韓国は『敵』なのですか」との声明が、1週間で18万人の賛同者を得たことを紹介して、「意見が違えば、手を握ったまま討論を続ければいいではないですか」との言葉を援用しています。

 

 韓国からのゲスト、韓国進歩連帯・韓国国際平和フォーラムのソン・ミヒさんは、南北の対話や米朝首脳会談が行われ朝鮮半島・東北アジアが変貌していこうとする中にあって「韓国と日本の平和勢力は、歴史の転換を妨害している韓日の保守勢力に対抗し、東北アジアの平和と繁栄の道を切り拓くため、共に手を取り合おう」と呼びかけ、安倍政権に対しては「誠実な過去精算により、経済規模に見合った、責任ある東アジアの一員に戻ってください」と述べています。

 

 原水禁運動は、東北アジアの非核化や在日米軍基地問題に、そして在外被爆者問題を通じて、戦後補償の課題にも積極的にとりくんできました。ソン・ミヒさんの指摘にあるように、韓日の対立は、経済だけではなく、歴史や政治・軍事問題に拡大し、全面化しています。私たちがめざす、東アジアの平和にとって日韓関係、そして日朝関係の正常化は重要な課題です。原水禁は、関係の正常化と朝鮮半島・東北アジアの非核化に向けてとりくみます。 

 

 もう一つの82日の危険な情勢は、米露間の中距離核戦力全廃条約の失効です。

 

 イージス・アショア配備問題で防衛省交渉した際に、イージス・アショアの発射台で攻撃用ミサイルを発射できるかと質問したことがあります。防衛省側の回答は「可能である」と言うものでした。

 

 前田さんの指摘では、中距離核ミサイルの発射台となることも考えられます。米国からは「同盟国の責任を果たせ」との要請の声も聞こえ、今後非核三原則の課題となることが懸念されます。原水禁が主張してきた非核三原則法制化のとりくみも重要となってきます。原水禁は、核のない世界をめざして、核兵器禁止条約の発効にむけて、「核兵器廃絶1000万署名」に全力でとりくみます。

 

 第三、第四分科会では、原発と自然エネルギーの課題が話し合われました。原子力市民委員会委員で原子力工学の専門家後藤正志さんからは、過酷事故対策も人間の手で行われている以上確実に機能する保障はないとして、また、多重・多層防護は事故の発生確率を減らすことができても事故をなくすことはできないと、その限界にも言及し、再生可能エネルギーシフトが必然と述べています。

 

 原子力情報室共同代表・原水禁副議長の西尾獏さんは、様々な資料を提示しながら、原子力政策の矛盾と行き詰まりを指摘しています。同じく原子力資料情報室の松久保肇さんは、国の第5次エネルギー基本計画にある2030年原子力エネルギー比率2220%程度は、原子力発電所の34基程度の再稼働を必要とするとして、この計画にリアリティーはないと指摘しました。

 

 西尾さんは、エネルギーフォーラム佐野編集主幹の「とても残念だが、原子力発電所の新増設は、もう無理だと、つくづく思うようになった。もう、建設に振り向ける資金余力はない。そんなものに、1兆円近くを融資する金融機関は、あり得ない」と言う言葉をひいて、原発の終焉を示唆しています。

 

 ドイツ連邦議会のクラウス・ミンドルップ議員は、ドイツで再生可能エネルギーの比率が、今年で40%に達すると報告されました。2030年までに65%、2050年までに95%の見込みであるとしています。

 

 ドイツでは、福島原発事故の直後の2011326日、「フクシマを見よ。全原発の閉鎖を」とのスローガンの下、約25万人が参加する反核デモがあり、それまで原発推進派であったメルケル政権は、「確実なエネルギー供給のための倫理委員会」を設置し、最終的に原発の段階的廃止と再生可能エネルギー移行を提案しました。政府の姿勢によって、日本とドイツで、事故から8年後、大きな違いが生まれています。

 

 開会総会で、福島県平和フォーラム瓜生忠夫副代表から、訴えがありました。国策で推進してきた原発の重大事故で被爆した県民、国と東電はしっかりと責任をとれの要求は、あたりまえのものです。原水禁は、健康被害に対する医療支援や生活支援を、国に対してしっかりと要求していかなくてはならないと考えます。

 原水禁は、「核と人類は共存できない」との先輩の言葉を胸に、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を、大江健三郎さんや瀬戸内寂聴さんなどの協力で、多くの市民とともに展開してきました。

 

 第三分科会には、原発ゼロ基本法案をとりまとめた、立憲民主党衆議院議員の山崎誠さんにもおいでいただき、原発ゼロ社会に向けたとりくみをお話しいただきました。「脱原発社会」の成立まで、原水禁は、市民社会とともに、しっかりと頑張って行きます。

 

 原水禁世界大会長崎大会が始まった87日、沖縄県は、辺野古新基地建設をめぐって「県が実施した埋立承認の撤回を国土交通大臣が取り消した裁決は違法として、その裁決撤回を求める訴えを起こしました。

 

 第一分科会で沖縄平和運動センターの山城博治議長は、「30度を超える炎天下で、毎日毎日、安倍政権の不条理に抗議の声を上げている、 しかし、全ての声が無視されている現状がある」「なんでここまで収奪され、無視され、また再び防衛の盾にさせられる、だったら捨ててください、沖縄を捨ててください、そんな気もしてきます」と真情を吐露されました。

 

 山城さんの「平和の声を堂々と上げていこう」との力強い言葉を、私たちは受け止めなくてはなりません。

 

 沖縄は、琉球王国から、琉球処分をもって明治政府に編入させられました。強いられた皇民化教育、そして沖縄戦と捨て石作戦、戦後は米軍統治下を経て、本土復帰後も、在日米軍の基地の74%も抱えることになる。

 

 沖縄は、一貫して差別にさらされて来ました。沖縄の歴史をしっかりと見つめ、沖縄県民の思いをしっかりと受け止め、沖縄県民とともに闘いを進めなくてはなりません。

 

 昨日の朝日新聞に、長崎で被爆した中村由一さんの話が載っていました。放射線傷害で髪が抜け落ち「カッパ」とあだ名された。髪が生えてきたら「ゲンバク」になった。

 

 被爆者と言うだけで差別された。同級生に破かれた小学校の卒業証書を見ると、あの頃の孤独や怒りがよみがえってくるといいます。差別は、長崎の被爆から66年を経て、福島から避難した子どもたちにも向けられたことを忘れてはなりません。

 

 韓国をホワイト国から外すことに、日本人の9割が賛成しているといいます。そこに、戦前の殖民地時代から引きずってきた、アジア蔑視の差別意識がないでしょうか。

 

 沖縄と韓国、広島・長崎の被爆者と福島からの避難者、私たちは、私たち日本人は、一体何を歴史に学んできたというのでしょうか。

 

 私たちは、一人ひとり、かけがいのない、取り替えることのできない、命なのだ。命の尊厳を、一人ひとりの命の尊厳を、基本にして原水禁運動は成立してきました。そのことを決して忘れてはなりません。

 

 「人間は生きねばなりません」という、故森滝市郎原水禁議長の言葉。決して取り替えることのできない、世界でたったひとつの、私の命として、私たちは「生きねばならない」のです。

 

 原水禁運動の原点を持って、被爆74周年、原水禁世界大会のまとめといたします。

 

 福島大会から、本当に長い間、ありがとうございました。

 

 

2020年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたシンポジウム

~核兵器廃絶1,000万署名に向けてキックオフ!~

 

 8月8日、原水禁、連合、KAKKINの三団体主催による「2020年核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議に向けたシンポジウム~核兵器廃絶1,000万署名に向けてキックオフ!~」(キックオフ集会)が開催されました。

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 主催者三団体を代表し、神津里季生連合会長が「2020年に行われるNPT再検討会議に向けて勢いを付けて署名に取り組む」と挨拶をしました。

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 続けて、外務省報告として、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部軍備管理軍縮課長の今西靖治さんが、2019年のNPT準備会合で話し合われたこと、これまで2回開催された賢人会議の継続開催の必要性を訴え、来年に向けて日本政府も力を入れて行くことを述べました。

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 被爆者の訴えとして、長崎平和推進協会の奥村アヤ子さんが、「家族9人で幸せにすごしていましたが、原爆のために、一瞬にして、家族は引き裂かれ、当時8才だった私は、本当に辛く寂しい毎日でした」と涙ながらに語られました。

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 「核兵器をめぐる最近の国際情勢」と題して、長崎大学核兵器廃絶研究センターの吉田文彦センター長が基調講演を行いました。「みなさんもできることから、核兵器を廃絶するための取り組みをやって下さい」と会場へ呼びかけました。

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 続いて、三団体よりそれぞれ2人ずつが登壇し、代表して、連合副事務局長の山本和代さんが「核兵器廃絶1000万人署名」の趣旨を説明し、世論喚起に取り組むと決意表明を行いました。

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 最後は、手話付きの「For The Peace Of World」を会場全体で合唱し、閉会となりました。

 キックオフ集会で決意を新たに、2020年NPT再検討会議へ向け、核兵器廃絶のため、署名活動に取り組んでいきましょう。

 

 

 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第8分科会 見て・聞いて・学ぼう“ナガサキ” 
 
 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 3F ビデオホール (長崎市上町1-35/℡095-826-5300)
DVD上映:『君たちはゲンバクを見たか』(2001年 原水禁国民会議制作 23分)
被爆証言:山川剛(長崎県原爆被爆教職員の会)
講演:西岡由香(漫画家)
 
内容:映像や被爆者の証言などを通して被爆地・ナガサキの実相にふれ若い世代へとつなぐ運動継承について、DVD上映の鑑賞、講演を通して学びました。
 
 
 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第4分科会 脱原子力Ⅱ─原発政策の矛盾
 
 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:長崎新聞文化ホール 3F 真珠の間 (長崎市茂里町3-1/℡095-844-2412)
講師:後藤政志(元原子炉格納容器設計技術者)、西尾漠(原子力資料情報室共同代表)/現地報告:福島、高校生平和大使(福島選出)
 
内容:福島原発事故以来、原発の安全対策強化の費用が莫大になり、以前から高かった原発のコストが、さらに高くなってきました。結果として安倍政権が押し進めようとしていた原発輸出はとん挫し、企業は多額の負債を抱えるようになっています。核燃料サイクル計画も事実上とん挫し、またMOX燃料工場の目処もたたず、47トンも抱えるプルトニウムの使用計画も示すことができないままとなっています。原発政策の全体像を展望しながら、その矛盾を明らかにし、脱原発社会へのとりくみについて、福島県選出の平和大使、福島現地からの報告、講師からの講演を経て、質疑応答が行われました。
 
 
 
 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第7分科会  ヒバクシャⅢ─被爆二世・三世問題の

解決に向けた運動の意義と展望

 

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日時:8月8日(木)9:30~12:30

会場:長崎県勤労福祉会館 4F 第2・3中会議室 (長崎市桜町9-6/℡095-821-1456)

講師:中鋪美香(被爆二世集団訴訟弁護団・弁護士)、崎山昇(全国被爆二世協会長)、

平野克博(全国被爆二世協事務局長)

報告:高校生平和大使

◆初参加者は3割程度

 

  第7分科会「ヒバクシャⅢ-被爆二世・三世問題の解決に向けた運動の意義と展望」は参加者44名(初参加11名、被爆一世5名、二世7名、三世3名)で開催された。冒頭、長崎県被爆二世の会会長の丸尾さんから「被爆二世の運動をみなさんに知ってもらいたい」とのあいさつを受けたのち、高校生平和大使からのアピールが行われ、分科会に入った。

 最初に、全国被爆二世協の崎山昇会長から「再び核被害者をつくらないために 将来世代を含む核被害者の人権確立と核廃絶をめざして」と題した報告を受けた。崎山会長は、全国被爆二世協の活動として、被曝二世・三世を5号被爆者と位置づけたうえで、国家補償を明記した被爆者援護法を適用することを求めてきたことが報告された。しかし、なかなか要求が実現しない中で、国内的には、被爆二世集団訴訟に取り組んでいること、国際的には、国連人権委員会での対策を行ってきたことや、今後については、来年行われるNPT再検討会議での意見反映に取り組んでいくことが報告された。

 続いて、被爆二世国家賠償請求訴訟弁護団の中鋪美香弁護士から「被爆二世集団訴訟〜意義と展望、現在の訴訟経過について〜」と題した報告を受けた。中鋪弁護士は、被爆二世集団訴訟は、被爆二世に対する援護の問題について、国が全く対応してこなかった状況が背景にあり、放射線被曝の遺伝的影響への問題提起を行い、司法の場を通じての解決をめざして行くことが目的であると述べた。このため裁判では、立法不作為の違法性について主張するとともに、立法義務を生じさせるための、放射線被曝の遺伝的影響についての科学的裏付けについて、争っていることが説明された。最後に、現在裁判は、広島地裁、長崎地裁において原告・被告双方の主張のやりとりが続いており、今後も裁判が続くので、ぜひ傍聴に参加して欲しいと述べた。

 さらに、平野克博全国被爆二世協事務局長から、「今後の取り組みについて」と題した提起を受けた。被爆二世の集団訴訟を通じて、原子力政策も含めて、国の政策の変更を迫って行くこと、また、国連人権委員会の取り組みなどを通じて、国際的な理解に比して、日本政府の対応があまりに後ろ向きであることがわかったので、裁判や、国会対策、被爆二世の健康診断の充実など、自信を持ってさらに取り組みを続けていきたいこと、被爆二世・三世の組織の拡大などに積極的に取り組んでいきたいことなどが、提起がされた。

 質疑としては、「私は被爆三世だが、自らの問題として、考えたことはなかったので非常に参考になった(高校生平和大使)」「被爆二世・三世の方々の置かれている状況を初めて知った。被爆二世・三世に対する差別の具体的事例を教えて欲しい(新潟)」「被爆二世・三世に対する差別の問題については、その解消に向けて、国の責任で教育も含め対応すべき。(広島)」「学校で8月6日と8月9日に平和学習をしている。二世・三世の問題も今後、子どもたちに伝えていきたい(大分)」などの意見、質問が出された。

 最後に、広島県被爆二世団体連絡協議会の政平会長から「被爆者は戦争の被害者だ。二度と戦争を繰り返してはいけない。」と、さらに、全農林の藤木さんからは「署名や裁判の傍聴行動、カンパの取り組みなどを含め、それぞれの地域から、今後も取り組みを進めていこう。」とそれぞれまとめがされ、分科会を終了した。

 

 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第6分科会  ヒバクシャⅡ─在外被爆者と戦争責任

 
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日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:長崎ブリックホール 3F 会議室1・2 (長崎市茂里町2-38/℡095-842-2002)
講師:在間秀和(弁護士)
海外ゲスト:イ・テジェ(韓国被爆二世の会会長)
報告:高校生平和大使(山之上飛鳥、内山洸士郎)
 
  初めに、佐賀の高校生平和大使から韓国訪問報告を受けた。韓国の広島と言われるハプチョンを訪ね、韓国の被爆者に「日本人を恨んでいますか」と聞いてみたところ「恨んでなんかいません、同じ被爆者として、過ちを繰り返さないようにすることが大事」と話してくれた。日帝強制動員歴史博物館の従軍慰安婦の姿は同じ女性として悲しくて言葉にならない、朝鮮韓国人を差別した事実は、例えば防空壕の入り口に「韓国人入るべからず」と書かれているなど、日本人は本当にひどいことをしたと思った。自国の加害性を考えなければならないと感じた、という。長崎の平和大使は政治と民間の交流とは違う。第22代平和大使23名で、国連で核兵器の廃絶と平和な世界実現のために訴えていきたい、と抱負を述べた。
 
 次に海外ゲストのイ・テジュさんから報告を受けた。イ・テジュさんの父イ・カニョン(李康寧)さんは、3・1運動で逮捕され、10カ月の実刑を受けたが、死刑にはならず懲役刑で済んだ。それでも拷問ですべての爪が無くなっていた。父は1927年小倉で生まれた。長崎の三菱兵器工場に徴用され、宿舎で被爆した。寺で寝ていて直撃は受けず、工場と寺を行き来した。韓国に帰国するのは容易ではなかった。1950年朝鮮戦争では4年間参戦し、軍務に服した。イ・テジュさんが小学校5年生の時、釜山に引越し父は貿易会社を起こしたことから、日本と韓国を行き来し日本人と知り合った。在日時は被爆者として扱われるが、在韓時は被爆者ではない、という扱いを受け、長崎地裁に提訴、釜山支部長として被爆者援護法の国外適用を求め、一緒に運動してきたが、実現されないまま父は亡くなった。
 過去の歴史を隠蔽すれば過去から学ばない。歴史の輪は廻っている。朝鮮半島の分断の責任は日本にある。再び戦争のない社会を実現するために平野伸人さんと協力し高校生の相互訪問を行っている。
 
 1909年安重根は、伊藤博文を暗殺した。安重根は、伊藤博文を批判して東洋平和論を書いたが安倍政権は100年前の伊藤博文と同じである。韓国の高校生と一緒に原爆資料館を見学したが、その中に永井隆の言葉が紹介されている。一本の針をもって平和を語るな、と。軍備を拡大して平和を語る安倍首相に通ずる。
 
 続いて、在間弁護士から資料にある通り「広島三菱・元徴用工被爆者裁判が提起するもの」と題して講演された。まず初めに1939年に国民徴用令が発せられ1944年8月には「半島労務者の移入に関する件」の閣議決定が行われ、国家ぐるみの徴用であり、自主的な日本への移動ではなかったことを明確にした。裁判は、徴用工としての未払い賃金、被爆後の放置、被爆者援護法の非適用などを巡って争われた。一審敗訴、広島高裁一部勝訴。最高裁2007年11月、勝訴を勝ち取る。一審敗訴の後、釜山地方法院にも提訴、2007年釜山地方法院は時効で請求棄却。釜山高等法院に提訴、控訴棄却。しかし、同時進行で日韓協議経過の情報開示請求に対し勝訴の結果、開示され2012年の大法院判決は高等法院への差戻し、時効は信義誠実の原則に反するとして、不法行為による損害賠償請求権は協定によっては解決されないとされ、高等法院に差戻された判決で一人800万円の支払いが命じられた。これに対し三菱重工は上告し、その大法院判決が2018年11月に出され、今問題となっている徴用工問題に発展している。
 
 在間弁護士は、事実として認められた判決文を引用し、徴用工の実態を示し、日韓基本条約並びに請求権協定について解説を加えた。日本人の大きな思い違いに無償3億ドル、有償2億ドルは韓国側に渡されたお金だと思いっていること。詳細をしっかり読めば「日本国の生産物及び日本人の役務」と書かれており、お金は日本企業にわたり、その金を韓国で使ったに過ぎないこと。しかも供与、貸付は大韓民国の経済の発展に役立つものでなければならない、と指定され、徴用工への支払いを命じていない。
 
 次に日本政府は盛んに「すべて解決済み」のみを強調するが、政府間の請求権は「解決済み」であっても個人の請求権は消滅していない。この点は日本政府も認めていることだ。しかも、原爆訴訟、シベリア抑留訴訟、カナダ在外資産補償請求訴訟でも個人の請求を拒否できないと、日本政府自身が述べていることだ。最後に、なぜ戦争被害者が訴え続けるのか、に思いを巡らせることが大切であり、政府が対立をあおるような行為をしてはならない、と結んだ。
 
 会場からは、北九州でも徴用工が戦後放置され、国家の保護もないままに闇船に乗って韓国に戻ろうとして台風に会い、多くの犠牲者が出たことを忘れてはならない、として今も慰霊祭が行われていることなどを紹介する発言があった。
 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第5分科会  ヒバクシャⅠ─ヒバクシャの現在

 
日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 3F メディアスリー (長崎市上町1-35/℡095-826-5300)
講師:振津かつみ(医師)、竹峰誠一郎(明星大学教員)
海外ゲスト:ラニー・クラマー(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)代表)
サマンサ・ハナーグ(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)副代表)
 
 
 はじめに、山内武さん(被爆体験者訴訟原告団 第二陣原告団団長)から「被爆体験者」とは何かを話して頂きました。長崎の被爆地域は「旧長崎市」を基本に1957年に制定され、その後徐々に拡大してきましたが、爆心地からほぼ12km、近点7km以内に限られました。爆心地から12km以内であっても旧行政区域外として、被爆者健康手帳の取得が出来ない被爆者は、被爆地域の拡大を求め、現在では「健康診断特例地域」に居る「被爆体験者」として法的には取り扱われることになりましたが、被爆者援護法に基づく「被爆者」ではないということ。しかし、住民は放射能に汚染された空気を吸い、水を飲み、畑の作物を食べ、内部被曝による放射線障害に苦しんできた。明らかに「被曝者」であると訴えられた。
 
 振津かつみさん(医師/チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西)からは、ヒバクの実相を世界に広め、これ以上ヒバクシャを作らせてはいけない。マーシャルの核実験被害者やウラン採掘や核実験被害に苦しめられてきたアボリジニなど先住民との交流・連帯の中で「核と人類は共存できない」との確信を深めてきました。「核時代」を終わらせることをめざして前進していくことが重要である。と訴えられた。
 
 竹峯誠一郎さん(明星大学教員)は、マーシャル諸島での長年(約20年)の聞き取り調査を基に、歴史的経過や現地の状況について報告頂いた。まず、米国は世界初の核実験をニューメキシコで行い、その際に実験場を含む一帯が汚染された。その後、広島・長崎へ原爆投下されたのだが、以降の核実験場の選定をめぐって、米国以外となったのは言うまでもなく最終的にマーシャル諸島に決定した。決定以降、米国の力の脅威(日本に勝利したこと)にマーシャルは承諾せざるを得ず、結果、強制移住が実行され、土地を奪われた。彼らにとって土地は、「文化・存在」を否定されることであった。1946年7月に戦後初の核実験が開始され、1958年まで67回(広島型原爆の7,000発相当)もの原水爆実験が行われ、その間には、「第五福竜丸」ほか千隻もの日本漁船が被曝している。
また、土地を奪われた先住民は被曝と飢えに苦しみ、数回の移住をさせられたが元の暮らしには戻れない。さらには、あらゆる観点から人体実験のデータを得られると被爆地への帰還などをさせられていた。と報告があり、竹峯さんは「唯一の被爆国」との意識では核問題は解決しない。と強く訴えられた。
 
 ラニ・クレーマさん(REACH―MI代表)は、生まれ育った故郷に戻れぬまま亡くなった祖母の無念を涙ながらに話され、サマンサ・ハネルグさん(REACH―MI副代表)は、ルニットドーム(核廃棄物格納施設)の老朽化など今後の大きな課題について報告があり、米国は米国内の核被害者の要求には応じるが、私たちマーシャルの核被害者の要求には応じない、差別的扱いは許せない。マーシャルと世界はつながっている、若い世代に問題を明確に伝え「核廃絶」を実現させたい。と訴えられた。
 
 参加者との質疑もあり、「核」に対する問題意識も良い意味で広がり、共有できたと感じた。世界のヒバクシャの現在を知ることで「真の平和」を実現するには、「核兵器・核施設」の廃絶が優先されなければならないと強く感じた分科会となった。
 
 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第3分科会  脱原子力Ⅰ─自然エネルギーの今とこれから

 

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日時:8月8日(木)9:30~12:30

会場:長崎新聞文化ホール 3F 珊瑚の間 (長崎市茂里町3-1/℡095-844-2412)

講師:松久保肇(原子力資料情報室事務局長)、山崎誠(衆議院議員)

海外ゲスト:クラウス・ミンドラップ(ドイツ・社会民主党)

◆初参加者は7割程度

 

 原子力資料情報室の松久保さんからは、廃炉の時代を迎えた原発の現状とエネルギー政策の転換の重要性が示された。現時点では、原発の新増設は想定されておらず、遅くとも2085年までに原発はゼロとなる。原発は高コストな発電方法であり、さらに安全対策費が増加している現在、そのコストはさらに高額となっている。しかも、膨大なプルトニウムを生み出す使用済燃料再処理計画は各国からの懸念の材料となっている。原発を前提とした日本のエネルギー供給計画の破綻は明確であり、原発をゼロにし、原発と化石燃料への補助が8割を占めるエネルギー関連予算を、再エネと省エネを促す予算に組み替える転換戦略が必要だと述べられた。

 衆議院議員の山崎さんからは、「原発ゼロ基本法」をめぐる日本の政治情勢についてお話があった。世界で進む再生可能エネルギーの現状を多数紹介しながら、世界が加速度的に再生可能エネルギーにシフトしている状況を述べられた。一方、衰退する原発に依存している日本は、世界の流れから完全に取り残されている。原発ゼロこそ、日本経済・日本社会の再生の道であるとし、「原発ゼロ・エネルギー転換は未来の希望である」と力強く訴えられた。

 ドイツ社会民主党のクラウス・ミンドラップさんからは、ドイツにおける脱原発事情についてお話があった。2022年には最後の原発が止まり、その後は在来型エネルギーから再生可能エネルギーに転換されていくという世界的にも先進的な事例が紹介された。

 また、参加者からは「廃炉に関する具体的な費用や期間は」、「再生可能エネルギーの比率や日本での再生可能エネルギーの可能性は」、といった質問が出された。

 最後に運営委員から、「私たちが動かないと脱原発は前に進まない。今回学んだことを地域に持ち帰って、具体的な運動につなげよう」とまとめがあった。

 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第2分科会   平和と核軍縮Ⅱ─朝鮮半島の非核化と日本

 
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日時:8月8日(木)9:30~12:30
会場:NBC別館 2F メディアツー (長崎市上町1-35/℡095-826-5300) 
講師:梅林宏道(ピースデポ特別顧問)
海外ゲスト:スージー・アリソン・リットン(米国・ピースアクション)
ソン・ヨンフン(韓国・参与連帯)
 ◆初参加者は4割程度
 
 
 第二分科会「平和と核軍縮Ⅱ-朝鮮半島の非核化と日本」は、60名参加(内、初参加者20名)するなかで、梅林宏道氏(ピースデポ特別顧問)と海外ゲストのスージー・アリソン・リットン氏(米国・ピースアクション)の両名より、問題提起を頂いた。
 
 梅林氏からは、「北東アジア地域の平和と安全への日本の関与」「グローバルな核兵器廃絶への日本の使命」ということで、①核兵器は誰の手にあっても、絶対悪である、②板門店宣言は中身、プロセスともにかなり具体的な宣言であり、これまでの宣言とは異なる、ただし、南北だけで進めることができないという本質は押さえておくべき、③平壌宣言では非武装地帯だけでなく、半島全域の敵対関係終息を確認したことが重要、④米朝首脳共同声明では大筋の流れは確認できているが、それぞれに課題があり、中身を進めていくためには10年は必要、⑤日本不在の朝鮮半島非核化はかなり不安定であり、北東アジア非核兵器地帯案が最も良いと考える、⑥核兵器禁止条約への日本の参加は「核の傘」政策からの転換が必要であること、などが話された。
 
 スージー氏からは、ピースアクションの進めている具体的な取り組みとして、①米国による核の「先制使用」を禁止する法案の支持、②核攻撃を発射する大統領の一元的な権限を廃止するための法案の支持、③米国が核攻撃を発射するまでの時間を延長すること、④イラン、北朝鮮との極めて効果的な核合意への支持、などがあるという話がされた。
 
 その後、参加者より8件の質疑が出された。
梅林氏に対しては、①地域安全保障機構を準備し、北東アジアの安全保障改善の基礎とするということであるが、日本の果たすべき役割を教えてほしい、②世界の非核兵器地帯の条約が結ばれてきた背景などを教えてほしい、③日本の外交力の衰えを感じるが、北東アジア非核兵器地帯案を進める力が今の日本にあるのか見解を伺いたい、などの質問などがされ、
 
スージー氏に対しては、①ピースアクションの活動でさまざまな法案の支持をしているが、その進捗状況、そしてアメリカの子供たちは平和に対する問題に対してどのように考えているのかを教えてほしい、②ピースアクションの方々が日本の現政権などをどう評価されているかを教えてほしい、などの質問がされた後に、それぞれの講師より現状の説明や見解などが話された。
 
 まとめとして、日本という国がアジアの国からどう見られているのか、日本の外交が問われているなどの発言があったように、戦後74年が経過するなかで、日本が今後どうあるべきなのかが問われている。分散会のテーマでもある、「朝鮮半島の非核化と日本」ということでは、大きく状況が動いている朝鮮半島との関係性も含め、平和に向けての信頼関係をどう構築していくかということを私たち自身もしっかりと受け止め、今後の取り組みに繋げていかなければならないということを確認し、分科会を終了した。
 
 
 
 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  長崎大会

第1分科会   平和と核軍縮Ⅰ─日米同盟強化と沖縄

 

日時 : 8月8日(木)9:30~12:30

会場 : 長崎ブリックホール 3F 国際会議場 (長崎市茂里町2-38/℡095-842-2002)

講師 : 前田哲男(ジャーナリスト・軍事評論家)

海外ゲスト:ソン・ミヒ(韓国・進歩連帯)

沖縄ゲスト:山城博治(沖縄平和運動センター議長)

報告:高校生平和大使

◆初参加者は5割程度

 

内容 :戦争法が強行採決されてから4年。この間、敵基地攻撃を可能とし、専守防衛を逸脱する装備・技術の導入が進められています。そして、南シナ海、朝鮮半島近海や上空で、日米が軍事訓練を展開し、日米の軍事一体化、日米統合軍構想が現実のものとなっています。一方、日本および韓国で進められる米軍再編は、両国の負担によって展開され、安全保障のためとされる米軍駐留費(思いやり予算)や有償軍事援助による米国製兵器の導入で、国の財政を圧迫しています。また、米国の東アジアの軍事的拠点として位置付けられる沖縄では、相次ぐ米軍機の事故、米兵・軍属による事件、爆音被害などに悩まされ、反対の民意にもかかわらず辺野古新基地建設が強行されています。沖縄県民の思いを基本にしながら、東北アジアの平和と安全について、考えを深め、今後の運動の方向性を探っていきます。

 

質疑応答詳細報告

 

⒈【鹿児島からの参加者】 原発のある地域に住む。高校生平和大使の発言に共感した。原子力基本法でもそうだが、何故、政府は原発に拘るのか?日本は将来的に核兵器を持ちたい意思があるでは。

【高校生平和大使 回答】 日本は、原発と核と分けて考えられている。危ない原発を安全に使いたいと考えているのでは。原発も核兵器も危ない。福島の原発事故の事を訴えていきたい。

 

⒉【福岡からの参加者】 緊迫した状況が続いているが、何故大手を振って米軍基地があるのか?原発事故の収束が見えない中、軍事力強化でアメリカの武器を買い、中国脅威論が強まっているが、抑止力になるのか?先制攻撃で核を使う可能性があるでは?

⒊【大阪からの参加者】 南西諸島防衛ラインは、千キロ以上あるが、今の自衛隊では守れないと思う。世界の平和的発展、経済的発展をなしていく、運動を大きくしていきたい。

【前田哲男 回答】 米軍基地の存在意義は、何なのか?サンフランシスコ条約で米占領軍は、90日以内に撤退。しかし、日米安保条約によって占領軍が残り米駐留軍基地ができた。日米安保体制が構築され、占領特権が、港や空港使用などで今も続いている。港の使用許可は、自治体の権限が強い。小樽市や神戸市では、港使用を非核化している。中国脅威論は、米中の経済戦争が、軍事的に発展して日本がアメリカに力を貸している。今後は、専守防衛の見える化、安倍政権とは違う専守防衛、自衛隊のあり方をこちらから出していき、若い人達に伝えていく必要がある。

 

⒋【神奈川からの参加者】 日韓関係が悪化しているが、アメリカの脅迫的仲介によって日韓条約が結ばれたが、どう評価しているのか?

【ソン・ミヒ 回答】 日韓条約によって日本は全て終わったと思っているが、そうではない。お金は、経済的協力によって支払われており、戦争、植民地化における清算は終わっていない。日本は誠実に対応して欲しい。

 

⒌【福岡からの参加者】 毎月辺野古の問題を街宣行動。日本から米軍基地をなくしていく運動が必要。

【山城博治 回答】 南西諸島防衛ラインの問題は、沖縄では語られない。背景に、分断と差別の構造があり、不公平、不条理だ。沖縄の非軍事化を東アジアの非軍事化につなげていきたい。

 

⒍【神奈川からの参加者】 横須賀基地の現状を報告。トランプが来日し、安倍と横須賀で自衛隊に激励。海上自衛隊の軍艦が、米軍によって軍事化、使用される可能性がある。また、思いやり予算が今年で切れ、1兆円の予算が数倍になるのでは。

⒎【長崎からの参加者】 佐世保にも基地があるが基地にすがっている地元経済があり、保守系議員も含めて、説得する為に、良いヒントを。

【前田哲男 回答】 対案を作る必要かある。沖縄が良い例で、観光産業で1千万人がきている。

 

⒏【新潟からの参加者】 教員をしているが、子ども達に戦争をさせたくない。子ども達に、これだけは伝えたい。

【山城博治 回答】 私達の夢は、辺野古を世界遺産にしたい。現在1千万人の観光客がいるが世界遺産によって二倍にも三倍にもなる。しかし、たった一発の銃声によってなくなる。その事を強く訴えたい。

【ソン・ミヒ 回答】 子どもは、大人の後ろ姿を見る。大人の姿勢を見せ、平和のために生活することが大切だ。

【前田哲男 回答】 ヒロシマ、ナガサキ、オキナワの事を伝えることが大事。近い将来、被爆体験、戦争体験した人がいなくなる。しかし、語り継ぐ人がいる限り続く。そこから若い人たちの感性で、新しいものを創造していく必要がある。

 

   以上の討論・質問がなされました。

 
 

核なき世界を願って 原水爆禁止世界大会・長崎大会が開幕
 

 

 8月7日、長崎市ブリックホールで「被爆74周年原水爆禁止世界大会・長崎大会」の開会総会が開催されました。長崎県内や九州各県をはじめ、全国から1300人が参加しました。

 
 オープニングでは、高校生平和大使・高校生1万人署名活動実行委員会のメンバー100人以上がステージ上に所狭しと並び、この一年間の活動報告を行うとともに、署名活動のために作曲されたという「この声を、この心を」を合唱し、歌声を響かせました。
 
 その後、「第35回反核平和の火リレー」参加者の皆さんが駆け足でステージへと上がり平和を訴えながら長崎県内を一周したことを報告しました。
 
 原爆をはじめ多くの核被害の犠牲者への黙とうに続き、主催者あいさつに立った川野浩一・大会実行委員長は、74年前の原爆被害の悲惨な実情を語り、核兵器禁止条約に対する日本政府の姿勢を批判し、正すように訴えました。
 
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 アメリカ、韓国などから参加された海外ゲストを代表し、ドイツ・社会民主党のクラウス・ミンドラップさん(ドイツ連邦議会議員)がドイツでのエネルギー政策を報告し、「今は、エネルギー供給方法を模索する時代、日本は脱原発を実現し、今こそエネルギー政策の転換をはかるべきある」と呼びかけました。
 
 核兵器禁止条約に対する日本政府の姿勢、核兵器を取り巻く世界情勢の変化など、核なき世界をめざすためにどうすべきか等をまとめた大会基調を藤本泰成・大会事務局長が行いました。
 
 続いて、福島原発事故の実態について、福島県平和フォーラムの瓜生忠夫副代表は、福島の現在の惨状を訴え、「脱原発への取り組みを強める」と決意を述べました。
 
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 長崎からのメッセージとして、初めに、「被爆体験者」訴訟原告団の田長被爆体験者協議会会長であり第二陣原告団長の山内武さんと第二陣原告の矢野ユミ子さんのお二人が、政府および長崎市が、被爆地域外であることを理由に、被爆者認定を認めようとしないことを厳しく批判しました。
 
 田上富久・長崎市長から「被爆から74年が経っても世界にはまだ多くの核兵器がある。核兵器の無い世界をめざし、長崎だからできることに力を入れる」との訴えがありました。
 
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 長崎から始まり現在では全国17都道府県に活動が広がった第22代高校生平和大使23人が登壇し、それぞれ決意を述べました。
 
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 最後に「原爆を許すまじ」を大合唱して閉会しました。
 
 長崎大会は8日に分科会やひろば、フィールドワークなどで論議や学習を深め、9日には、閉会総会・平和行進が行われ、爆心地公園で黙とうをする予定です。 
 
 
 

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  被爆74周年原水禁世界大会・広島大会は、8月6日に広島県民文化センターでまとめ集会を開き、500人が参加。3日間の大会の報告とともに、「中距離核戦力(INF) 全廃条約」の失効に抗議する特別決議と、「ヒロシマ・アピール」を採択しました。

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マーシャル諸島や沖縄からも訴え
 74年前の8月6日に広島に投下された原子爆弾の犠牲者への黙とうを行った後、主催者あいさつで川野浩一・大会実行委員長(上顔写真左)は「あの日を繰り返してはならないとの思いで大会に集まった。しかし、安倍政権は隣国に敵を作り、憲法改悪を企てている」と指摘。「いつか来た道を歩むことがないように、すべての人たちのために運動を続けよう」と訴えました。
 5日に行われた子どものひろば「メッセージfromヒロシマ2019」を、4人の高校生が報告しました(上写真)。これは高校生を中心とした実行委員が運営したもので、広島朝鮮初中高級学校の朝鮮舞踊のオープニングで始まり、各自が平和の思いをボードに書いたり、広島で行われている平和の取り組み報告、全国の参加者や海外から参加した子どもたちのメッセージを受け、最後に平和メッセージを世界に発信しました。
 大会参加した海外ゲストを代表し、マーシャル諸島「REACH-MI」代表のラニー・クラマーさんがあいさつ(上顔写真中)。1946年~58年にマーシャル諸島で行われたアメリカの核実験の被害者の支援に精力的に取り組み、2015年に設立された「放射線被ばくへ人々の関心を高めるキャンペーン」(REACH-MI)の創始者として活動するラニーさんは、「マーシャル諸島の人々と、被爆地の広島・長崎、そして原発事故の福島の人々はともに核の被害を受けたことで共通している。みんなで立ち上がり、核なき世界を作ろう」と呼びかけました。
 特別報告として「守る、辺野古、憲法、いのち」と題し、沖縄平和運動センターの仲村未央副議長(上顔写真右)が名護市辺野古で建設が進められている米軍新基地建設問題の訴えを行いました。「安倍政権は、選挙で示された沖縄の民意を無視し、工事を強行している。また、宮古島など南西諸島でも自衛隊基地強化が行われている。こうした暴挙を止めるため、全国から安倍政権と対決しよう」と強調しました。

米露の中距離核戦力全廃条約の失効に抗議
 広島大会のまとめを藤本泰成・大会事務局長が行い、「人々の生きていくその場所から、場所と場所を繋いで「平和」を作りあげていこう」と呼びかけました。
 まとめはこちら
 特別決議として「中距離核戦力(INF)全廃条約失効は許されない」として、アメリカが離脱を表明した米露間のINF条約が8月2日に失効したことに抗議するとともに、日本が核兵器禁止条約の署名・批准を行うことを求めました。
 特別決議はこちら
 大会参加者の総意として、「被爆地ヒロシマを体験し、憲法を守り、一切の戦争を否定し、二度と悲劇が繰り返されないよう訴え、行動しよう」と「ヒロシマ・アピール」を採択しました。
 「原爆を許すまじ」を全員で合唱し、最後に佐古正明・大会副実行委員長が「広島で学んだことを地域に戻って広げてほしい」と閉会あいさつを行い、7日から9日まで開かれる長崎大会に引き継がれました。(下写真は「原爆を許すまじ」の合唱)
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原水爆禁止世界大会・広島大会のまとめ

 原水爆禁止世界大会広島大会まとめ

原水爆禁止世界大会実行委員会
事務局長 藤本泰成
 
  会場にお集まりいただきました皆さま、猛暑の中、3日間の大会に、真摯な討論をありがとうございました。開会総会から国際シンポジウム、8つの分会会、5つの広場、様々な課題で多くの意見をいただきました。しっかりと今後の運動にいかさなければならないと思います。大会の議論を、少しまとめてお話しさせていただきます。
 
 大会に先立つ8月1日、米露間の中距離核戦力全廃条約の失効に際して、グテレス国連事務総長は、国連本部で記者会見を行い、「世界は核戦争の貴重な歯止めを失う」との危機感を表明しました。同時に、2021年に期限を迎える米露間の、「新戦略兵器削減条約」の延長を呼びかけました。米国のトランプ政権は、イラン核合意やINF全廃条約から一方的に離脱し、オバマ政権が主張した「核なき世界」へのとりくみからも、離脱しようとしています。
 米国ピース・アクションの活動家スージー・アリソン・リットンさんは、開会総会や国際シンポジウムで、「核兵器や核戦争による脅威は、他のことと無関係には存在していない」「貧困や所得の不平等、テロリズム、気候変動とともに、恐怖と実存的脅威のエコシステムの一環だと考えている」と述べました。私たちの環境の中にある人類の脅威の全ては、今、社会の中で複合的に絡み合い、私たちを襲っているのだと、本当に大きな危機感を持って運動の展開をめざさなくてはならないのだと思います。
 スージーさんは、「歴史が繰り返して教えているように、力による安全保障はまったく安全保障にならない」と述べ、平和団体の活動家として「米国の現状には大きな懸念をいだいている」と結んでいます。
 
 米国のトランプ政権に対する大きな危機感は、日本の現在にも、全く同様にあてはまるのだと思います。第一分科会「沖縄で、何がおきているか」では、北上田毅さんと湯浅一郎さんが、辺野古新基地建設の様々な問題点を明らかにしました。
 工法の変更や工期の延長などを考えても、なお深刻な大浦湾の軟弱地盤の問題、辺野古という自然環境への土砂投入が、生物多様性を破壊すること、そして、その背景には、建設反対の世論を民主主義のルールを踏みにじっても無視し、建設を強行しようとする政府の姿勢があります。
スージーさんが言った「貧困と格差が拡大し、民主主義は弱体化し、投票者は権利を奪われ」と言う言葉と、日本社会の全てが、一致しているのではないかと感じます。
 
 第二分科会「日・米・韓軍事同盟の行方」では、軍事評論家の前田哲男さんから、自衛隊自身が「創設以来の大改革」と位置づける、奄美大島へ、宮古島へ南進する自衛隊について、「多次元統合防衛力」という、専守防衛とは全くかけ離れた自衛隊の将来像と中国を主敵とする「自由で開かれたインド太平洋ビジョン」について話されました。宮古島へのミサイル部隊の配備や水陸機動団、秋田県・山口県へのイージス・アショアの配備、今回の中期防全体が、中国を主敵として、明らかに米軍と一体となった運用をめざすものであることは明らかだと思います。
 また、前田さんは、INF全廃条約の失効が意味するものは、米露、米中の軍拡競争の再燃と中距離核戦力の太平洋配備であるとして、イージス・アショアの発射装置VLSにトマホークミサイルを装備すれば、強力な攻撃兵器になると指摘しています。
 米国の自国第一主義と力による平和は、米国との同盟深化、大統領との親密な関係を表出してはばからない安倍政権と一体となって、世界平和の大きな脅威に膨らんでいくのではないかと懸念されます。中距離核の太平洋配備は、日本を巻き込んで新たな脅威を東アジアにつくり出すことになります。
 
 第三分科会「朝鮮半島の非核化と日本」そして国際シンポジウムでは、ピースデポ特別顧問の梅林宏道さんから、この間私たちが継続して訴えている、東北アジアの非核地帯構想について、詳しく提起がされました。
 基調提起で触れましたが、このことが一朝一夕でできるとは思いません。しかし、米国の核抑止力に頼ろうとする日本政府の姿勢が、そのプロセスを阻んでいることは明らかです。その意味では、私たちのとるべき道も明らかになっているのではないかと思います。
 
 第七分科会「ヒバクシャの現在」には、マーシャル諸島共和国からラニー・クラマーさんとシャマンダ・ハナーグさんに来ていただきました。シンポジウムの様々な場面で、原水禁との深い繋がりが見えてきました。カタカナ「ヒバクシャ」でつながる、広い世界が見えてきました。「核」が、ウランの採掘現場から、原爆投下、核実験、原発事故、廃棄物の最終処分、様々な場面で、先住民族の権利を奪ってきた、マーシャルで核実験が行われたことと、福島・新潟。福井そして青森など、経済成長から取り残されるいわゆる「地方」において、原発建設が進められたことと根っこは同じ、「ヒバクシャ」がつながることの意味を再認識させられました。
 シャマンダさんの提起の中に、「不正義」と言う言葉が何度か出てきました。マーシャルに住みながら研究を重ねてきた、明星大学教員の竹峰誠一郎さんは、マーシャルの人々は「復興」という言葉を使わない、Justice、正義を求めるのだと話されました。
 私たち日本の市民の中では「復興」は聞いても「正義」と言う言葉をあまり聞かない、私もあまり使っていないことに気が付きました。「社会正義」そのことにコミットしないことが、日本社会を歪めているのかとも思います。侵害された「権利」を回復するのは、「復興」ではなく「正義」を求めることが大切だとの思いを新たにしました。
 
 第六分科会の「脱原子力Ⅲ‐福島の現実と課題」では、福島県平和フォーラム代表の角田政志さんから、フクシマの被災者の生活再建や賠償・保障の問題について報告がありました。避難者の権利は踏みにじられ、避難指示解除に伴う固定資産税、住宅の無償提供の打ち切り、医療費無料の打ち切り、様々な問題が浮かび上がっています。
 政府は、復興の名の下に、福島原発事故をなかったものにしようとしています。ロニーさんやシャマンダさんの提起にあった「正義を求める」の意味を、私たちはもう一度問い直すべきだと思います。
 高校生平和大使として活躍し、大学卒業後マーシャル諸島で働きながら、マーシャル諸島の人々と交流を深めた大川史織さんは、日本の統治下のマーシャルで戦死(餓死)した日本人兵士の父の慰霊の旅にでる老齢の息子のドキュメント映画『タリナイ』を制作しました。ご覧になった方もいるかもしれません。

 「タリナイ」という明らかな日本語は、マーシャルでは「戦争」を意味します。皆さんなぜでしょうか。マーシャル諸島は、スペインのそしてドイツの統治下に入り、その後1914年から30年間日本の委任統治領でした。日本語を理解する方もいて、「デンキ」「ニカイ」「チャンポ」という日本語も使われていると言うことでした。
 マーシャルの人々は、海とともに、島とともに暮らしてきました。マーシャルの歴史には、戦争はありませんでした。戦争にあたる言葉がありませんでした。戦争は、外から持ち込まれたもの、マーシャルの人々が求めてはいないもの、だから、戦争という意味に「タリナイ」と言う日本語が充てられた。日本の持ち込んだ戦争、アメリカの持ち込んだ核実験、歴史に翻弄されるマーシャルの人々の姿が浮かびます。

 平和を考えるとき、様々な歴史に、私たちは学びます。歴史には、様々な人の生きる姿が、そして「いのち」があります。人々の生きていくその場所から、場所と場所を繋いで「平和」を作りあげていきましょう。
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  原水爆禁止世界大会広島大会が始まる直前の8月2日、米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核戦力の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。

 INF全廃条約は、東西冷戦の最中1987年12月8日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。中距離核が実戦配備された東西ヨーロッパ社会の危機感から生まれた条約は、ヨーロッパ社会の安全保障に大きく貢献してきた。条約が生まれた意義と果たしてきた役割を省みない米国の姿勢は決して許されない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをつくるべきと提案しているが、それは条約離脱の理由にはならない。
 
 昨年のイラン核合意からの離脱も、ペルシャ湾・ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、イランを核開発の再開に呼び込むものだ。中東の平和と安定にとって、イラン核合意は重要な役割を持っている。一方的な離脱と主張からは、何も生まれないだろう。
 
 「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜し、自国の主張を押し通そうと、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、一方的に壊していくことは絶対に許されない。
 
 一方で、米トランプ政権は、「核態勢の見直し」において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。核兵器をもって世界に君臨し自国の利益を守ろうとする姿勢で、米国はどのような未来を想像しているのか。そして、その米国の姿勢を大きく評価する日本政府も同様である。米国の核抑止に依存し、核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢は、唯一の戦争被爆国とは到底言えるものではない。
 
 核兵器禁止条約の署名・批准が進んでいる。条約発効は目の前に迫ってきている。今、私たちは核兵器廃絶の道程からはずれることは許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長にむけた交渉をすみやかに開始すべきだ。そして、核兵器保有国の責任として、核兵器廃絶の国際的枠組みの再構築を図るべきだ。2020核拡散防止条約再検討会議において、自国第一主義から離れ真摯な議論を展開しなくてはならない。そして、日本政府は、唯一の戦争被爆国として核兵器禁止条約の署名・批准をすみやかに行わなくてはならない。
 
 原水禁は、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいくことを改めて確認する。

2019年8月6日
原水爆禁止世界大会広島大会参加者一同

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 被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会の2日目は、「平和と核軍縮」「脱原子力」「ヒバクシャ」の課題について、分科会が開かれ、それぞれ個別の課題を中心に議論を重ねました。
 
 平和と核軍縮については、第1分科会「沖縄で何が、起きているのか」(上写真)では、沖縄平和市民連絡会の北上田毅さんとピースデポ代表の湯浅一郎さんが、沖縄・辺野古基地建設問題を中心に、今後の取り組みを展望しました。
 第2分科会は「日・米・韓軍事同盟の行方」(上写真左)をテーマに、日本や韓国で進められている米軍再編や東北アジアの平和と安全にとってどのような取り組みが必要かを考えました。
「朝鮮半島の非核化と日本」を討議する第3分科会(上写真右)では、アメリカや韓国のゲストを含め、動き始めている朝鮮半島情勢をどう捉え、平和にむけた信頼をいかに作るかを議論しました。

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  [脱原子力」については、第4分科会の「自然エネルギーの今とこれから」(上写真右)では、ドイツのゲストから脱原発のあり方を学び、日本における再生可能エネルギーの可能性などを考えました。
 「原発政策の矛盾」について第5分科会(上写真左)では、韓国や各地の報告をもとに、原発政策の矛盾を明らかにし、脱原発社会の取り組みを考えました。
 第6分科会の「福島の現実と課題」では、福島の運動団体からの報告を受け、復興や補償のあり方について、国や東京電力の責任を問う意見が相次ぎました。

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 「ヒバクシャの現在」をテーマにした第7分科会(上写真左)では、ビキニ核実験から60年以上が経過する中で、現地の活動団体の報告を受けながら、ヒバクシャの連帯を問いました。
 第8分科会は、初めて原水禁大会に参加した人を対象に、広島・長崎の被爆の実相と原水禁運動の経過について、広島県原水禁代表委員の金子哲夫さんなどが語りました(上写真右)。

国際シンポで東北アジアの非核化などを討論

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 午後から開かれた「国際シンポジウム」(上写真)は、「核兵器禁止条約採択から2年―東北アジアの非核化に向けて、日本は何をすべきか」をテーマに、パネラーとして、梅林宏道さん(上顔写真左・ピースデポ)、米国からスージー・アリソン・リットンさん(同写真中・ピースアクション)、韓国のソン・ヨンフン(同写真右・参与連帯)が、国連の「核兵器禁止条約」にどう向き合うか、朝鮮半島の非核化や東北アジアの安全保障、2020年の核拡散防止条約(NPT)の再検討会議に向けた運動について議論しました。

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

 第5分科会 脱原子力Ⅱ─原発政策の矛盾

 
 
 日時:8月5日(月)9:30~12:30
会場:広島YMCA国際文化センター本館 地下 国際文化ホール(広島市中区八丁堀7-11/℡082-227-6816)
講師:伴英幸(原子力資料情報室共同代表)/海外ゲスト:ヨン・ソクロク(韓国・脱ウルサン市民共同行動共同執行委員長)/各地報告:北海道、青森、福井
 
内容:福島原発事故以来、原発の安全対策強化の費用が莫大になり、以前から高かった原発のコストが、さらに高くなってきました。結果として安倍政権が押し進めようとしていた原発輸出はとん挫し、企業は多額の負債を抱えるようになっています。核燃料サイクル計画も事実上とん挫しており、またMOX燃料工場の目処もたたず、47トンも抱えるプルトニウムの使用計画も示すことができないままとなっています。原発政策の全体像を展望しながら、その矛盾を明らかにし、脱原発社会へのとりくみについて、講師、海外ゲストからの講演ののち、各地からの報告、質疑応答となりました。
 
 
 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

第4分科会 脱原子力Ⅰ─自然エネルギーの今とこれから
 
 
日時:8月5日(月)9:30~12:30
会場:ホテルチューリッヒ東方2001 3F レオポルト(広島市東区光町2-7-31/℡082-262-5111)
講師:松原弘直(環境エネルギー政策研究所)/海外ゲスト:クラウス・ミンドラップ(ドイツ・社会民主党) 
 
内容:福島原発事故から8年が経過しました。直後に脱原発を決定したドイツ社会は、再生可能エネルギーを利用する社会へと歩みを進めています。しかし、事故当事国の日本は、事故の収束もできないまま再稼働をすすめてきました。結果として日本の再生可能エネルギーの進捗は遅れています。ドイツ社会のあり方を展望しながら、日本における再生可能エネルギーの利用と脱原発社会の実現に向けたとりくみについて、講師、海外ゲストからの講演ののち、質疑応答となりました。
 
 
 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

第8分科会  見て、聞いて、学ぼうヒロシマ

 
日時:8月5日(月)9:30~12:30
会場:広島県民文化センター 多目的ホール(広島市中区大手町1-5-3/℡082-245-2311)
DVD上映:『君たちはゲンバクを見たか』(2001年 原水禁国民会議制作 23分)
被爆証言:広島被団協・被爆を語り継ぐ会
講師:金子哲夫(広島県原水禁代表委員) 
◆初参加者は7割程度
 
 
 まず、「君たちは原爆を見たか」のDVD25分を視聴し、次に原田浩さんの被爆体験の話でした。原田さんは、「資料館の中に展示されている被爆にあった洋服の中に生身の人間の身体を表現することができない、その身体の臭などの問題がある。そこまでしたら、おそらく誰も資料館にこないだろう。できる方法で表現したい」と言われました。その他にも、資料館の館長としての使命感を感じさせるような、色々な被爆体験の話をしてくれました。
 
 続いて、金子哲夫さんの「核と人類は共存できない~原水禁運動の歴史」の講演でした。金子さんの話は、原水禁運動の歴史を「継続は力なり!非暴力の運動」の歴史として、とてもわかりやすくまとめられていました。原水禁運動の原点は「被爆者の救済なくして核廃絶なし 核廃絶なくして被爆者の救済なし」であることを確認し、「ここで聞いた話を帰ってぜひ、家庭・職場で話してほしい。そして、来年、また友人・家族を誘って参加してほしい」と締めくくりました。
 
 

 被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

第7分科会  ヒバクシャ─ヒバクシャの現在

(シンポジウム形式)

 

日時:8月5日(月)9:30~12:30   ≪同通装置使用≫

会場:アークホテル広島 4F 鶴の間 (広島市南区西荒神町1-45/℡082-263-6363) 

講師:振津かつみ(医師)、竹峰誠一郎(明星大学・教員)

海外ゲスト:ラニー・クラマー(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)代表)

      サマンサ・ハナーグ(マーシャル諸島・REACH-MI(NGO)副代表)

報告:被爆二世

◆初参加者は4割程度

 

講師の方の報告と、マーシャル諸島からのゲストの方の報告、パネルディスカッションが中心となった。

 マーシャルには資料館などはなく、事実を学びながら広く伝えていく。人権を確立していく。加害者がいて、被害者がいる。被害に対する責任を問いながら、伝えていく。

被害者が声を出していく中で、始めは小さいが、国際的にも訴え、国の政策にも反映させてきた。マーシャルでも止める力にもなった。

次の世代も含めた人権の確立、二度と繰り返さない運動につなげていきたい。と報告がされ、質疑では、「マーシャルの子供たちの様子が知りたい。どういうふうになっているのか、汚染されている地域の子供たちはどうしているのか」

大きな島に行ったのは聞いているが、どうなっているのかはわからない。とのことだった。

 

マーシャル諸島が独立したのが1986年、核実験の時はアメリカの植民地支配だった。

国を介してではなく、直接交渉していた。ビキニ以外の島の話しはほとんど知らない。

教科書は英語、学ぶのはアメリカの歴史。マーシャル語で書かれたマーシャルの歴史の教科書はほとんどない。

マーシャルの子供たちが読めるような本を作るとか、日本のこと、第5福竜丸のことが書かれている絵本とか、英語まで翻訳してくれれば、マーシャル語に翻訳すればいい。そうやって交流もすることが出来るのでは?

また、マーシャルだけでなく、タヒチ周辺の島々もフランスの核実験の被害に遭っている。情報が足りなく、放射線についての基礎的な知識が必要。

「広島のおばあちゃん」という本をフランス語に訳して政府機関に渡してきた。小さな取り組みではあるが、いろんなところで、いろんなやり方が出来ると思う。

平和に向けて皆さんがやっていることはある。しかしなかなか拡げられていない。共有がされていない。

被爆者援護法の英訳というのはないし、日本政府は作っていない。韓国をはじめとして、世界にいる核被害を受けた人たちも被爆者援護法の適用になる。被爆者援護法や広島が培ってきた運動の英訳を作ることができれば運動はもっと広がるだろう。

私たちが世界を見るとき、先進国の動向ばかり目を奪われている。本当に核の被害を知るなら、アメリカやフランス、中国の情報だけでなく、世界の周辺の小さな国に問題はあるし、核問題も見えてくる。

どうやって若い人に引き継いでいくか、人口が減っているから若い人は少なくなっているが、やっている人はいる。そういう人たちと交流することが大切。

ビキニでの核実験も、福島原発事故も風化させてはならない。

被爆者の方の高齢化に伴い、二世、三世の方が被爆者の体験を共有してきたものを伝える重要性、そのことを伝えていく役目はもちろんだが、その話を聞いて感じて、被爆のありのままの真実を学び、継承していく、職場や地域に持ち帰り、歴史の一つとして伝えていくことが大切。

74周年の世界大会を通じて「核と人類は共存できない」ということをあらためて確認し、ビキニ環礁での核実験や、福島第一原発事故を風化させてはならない。そのためにも継続した取り組みが重要となる。

被爆者の課題の解決や支援、被害者に対する補償問題、マーシャル諸島では「復興ではなく正義を求めている」「被害者ではなくサバイバーとして闘ってきた」と話しがされた。

風化の前に、まずは「知ること」「知るべき」である。

 

 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

第6分科会  脱原子力Ⅲ─福島の現実と課題

 

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日時:8月5日(月)9:30~12:30

会場:ワークピア広島 4F 芙蓉 (広島市南区金屋町1-17/℡082-261-8131) 

講師:佐藤和良(福島原発刑事訴訟支援団)、角田政志(福島県平和フォーラム代表)

◆初参加者は3割程度

 

 まず、福島県平和フォーラム代表の角田政志さんから、7月31日に東電福島第二原発全基の廃炉が決定されたことが報告された。しかし、引き続き課題は残っており、福島第二原発にしても、解体廃棄物の処分場の予定地も決まっていない状況であること、また、福島第一原発についてもトリチウム汚染水の問題など、廃炉完了の見通しが立っていないことが指摘された。さらに住民の健康の問題に触れ、モニタリングポストの撤去問題は、住民の不安を少しでも解消するためのものであるとして、国の撤去方針には、反対し続けていくとした。また、4巡目に入っている県民健康調査についても、被災者に対する補償をどうしていくのかと言う観点から交渉を続けてきており、特に19歳以上の甲状腺に関わる医療費無料化に取り組んでいることが報告された。さらに、除染の問題で、環境省の方針が汚染度の低いものは公共事業で再利用するという方針について、「安全性の確保ができるのか。軽く考えている。」と批判した。最後に福島の犠牲を無駄にしないためにも、原子力発電所の廃炉を実現していこうと、呼びかけがされた。

 質疑としては、健康被害について、事故後に白血病の発症率が増えているということが言われているが、実情はどうか(長野)などが出され、角田さんからは、マスコミもなかなか報道しないので、情報交換していくことが大切だとの話がされた。

 続いて、福島原発刑事訴訟支援団の佐藤和良さん(写真)から、「終らない福島原発事故と東電刑事裁判」と題した報告を受けた。佐藤さんは、冒頭、政府の原子力緊急事態宣言は未だ解除されていないことに触れ、福島第一原発の事故は、まだ終わっていないと指摘し、国の政策は復興優先で人権無視であると批判した。国は、なんとか福島原発事故は終わったことにしたいと思っており、2020年の東京五輪までに決着させようとの意図があると指摘した。区域外避難者の住宅無償提供打切りなど、被災者を分断するような政策が実行されている現状の中、東電に対して、多くの民事訴訟が行われている現状について報告された。

 続いて、刑事裁判について短編映画「東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故」を上映する形で報告された。裁判の過程で、東電の幹部は事故の原因の巨大津波を予期していたにも関わらず対策を取らなかったことや、双葉病院において、避難対象であった436名の避難誘導が遅れ、結果的に44名の命が奪われたことなどが明らかとなっていることが紹介された。2019年9月19日に判決の予定であるこの裁判は、日本の司法が問われているとともに、有罪判決を求める国民世論が大きくなるかどうかがポイントであるとして、世論喚起への協力が呼びかけられた。

 質疑としては、「津波対策」という観点だけでなく、「地震」という観点からも刑事裁判ができたのではないか(福岡)など質問が出されたが、証拠の関係で、「津波」にポイントを絞らざるを得なかったことなどが報告された。

 最後に、全体で「核と人類は共存できない」ことを確認して、分科会を終了した。

 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

 第3分科会 平和と核軍縮Ⅲ─朝鮮半島の非核化と日本

 

日時:8月5日(月)9:30~12:30

会場:ホテルチューリッヒ東方2001 4F エーデルワイス

(広島市東区光町2-7-31/℡082-262-5111)

講師:梅林宏道(ピースデポ特別顧問)

海外ゲスト:スージー・アリソン・リットン(米国・ピースアクション)

ソン・ヨンフン(韓国・参与連帯)

◆初参加者は4割程度

 

 米国・ピースアクションのスージー・アリソン・リットンさんからは、

①「核兵器や核戦争の脅威は、貧困、不平等、テロ、気候変動などとともに実存的脅威のエコシステムと結びついている」としたうえで、現在の米国の政治情勢は世界の非核化にとって困難な状況であるとの認識を示されました。

②そして、米国における「ピースアクション」の様々な活動を紹介され、その中でも「米国による核兵器の先制使用を禁止する法案」や「核兵器を発射する大統領の一元的な権限を廃止する法案」の取り組みを展開しているとの報告がありました。

➂最後に、朝鮮半島の非核化を実現するには、米朝双方が信頼感を醸成し、互いに譲歩することが必要で、非核化を経済制裁解除の条件にするのではなく、交換条件にすることが必要である

と発言されました。

 

 韓国・参与連帯のソン・ヨンフンさんからは、

①北朝鮮は朝鮮戦争の中盤から米国からの核攻撃を抑止するために必要として、核兵器にとりつかれてきた。しかし、北朝鮮が核兵器を追求し続けることは北朝鮮にとって大きな負担である。

②北朝鮮の国民は次に指導者に何を望んでいるか。経済開発なくして指導者の地位を固めることはできないだろう。

③北朝鮮の段階的なアプローチと米国の包括的なアプローチは両立可能であり、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築を同時に行わなければならない。北朝鮮の政権の保証と米国の北朝鮮敵視政策を放棄することが必要である。

と発言されました。

 

 ピースデボの梅林宏道さんからは、

「北東アジア地域の平和と安全への日本の関与」と「グローバルな核兵器廃絶への日本の使命」の二本の柱から発言がありました。

①まず、日本の70年に及ぶ過酷な朝鮮支配の歴史を振り返りながら、日本人があまりにも歴史を知らない。

②日韓基本条約を結んだが、韓国の民衆にとって「植民地支配の精算」が当時の独裁政権下で行われたことが、尾を引いて現状に至っている。

③北朝鮮が核保有する理由は一貫している。「米国からの核攻撃の脅威への対抗」であり、国の脅威がなくなれば核は必要ないということ。

④朝鮮半島の非核化と北朝鮮の安全の保証を同時に解決するには、「非核兵器地帯条約」(現在、世界には5つの条約があり、117カ国・地域が含まれる)を北東アジア、朝鮮半島につくることが必要。

⑤そうすると南北朝鮮、米国、ロシア、中国の5カ国が約束をしないといけないが、日本も加わらないと在日米軍の非核化の検証ができない。

⑥日本が核兵器禁止条約に協力できない理由は、「日本を守るために核兵器を使え」としていているため。「核の傘の政策」の転換を迫らないといけない。

と発言されました。

 

 質疑では、日本が核兵器禁止条約に賛成しないことについて、米国における核兵器に対する運動の現状について、在韓米軍の核について、最近の日韓関係について、市民レベルでの交流の必要性について、原発を含む核廃絶についてなど、7人の参加者から発言がありました。

 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会 

第2分科会 平和と核軍縮Ⅱ―日・米・韓軍事同盟の行方

 

広2.jpg日時:8月5日(月)9:30~12:30


会場:RCC文化センター 7F (広島市中区橋本町5-11/℡082-222-2277)

講師:前田哲男(ジャーナリスト・軍事評論家)

海外ゲスト:ハン・チュンモク(韓国・進歩連帯)

沖縄ゲスト:岸本喬(沖縄平和運動センター事務局次長)

◆初参加者は全体の8~9割

 

 前田さんより、8月2日にINF全廃条約が失効したことによって、軍拡競争が激化し、米国は中距離核戦力の太平洋配備をすすめる。それにより、秋田・山口に建設予定の「イージス・アショア」が迎撃装置から攻撃装置にされる危険性を指摘された。

 また、同日、安倍政権は対韓半導体輸出規制に続き、輸出優遇措置からの韓国除外を閣議決定したことをあげ、これにより、日韓は経済戦争に突入することになるとの懸念を示された。そして、1998年の日韓パートナーシップ宣言にもとづき、両国民の対立を煽るようなことはやめ、対話を続けるべきだと述べられた。

 ハンさんからは、朝鮮半島の恒久的平和と南北間の関係改善は、対朝鮮を掲げ、憲法「改正」や軍備増強をめざす安倍政権を脅かす状況となる。そのため、今回の報復措置によって、朝鮮半島情勢の緊張を高めようとしていると指摘された。

 岸本さんからは、沖縄で見られる軍備増強の報告があった。辺野古への新基地建設もそうだが、前田さん、ハンさんも指摘されている南西諸島への自衛隊増強の動きは、中国を主敵とした東シナ海から南シナ海にかけての南西諸島防衛ラインに他ならず、米軍の先兵部隊としての自衛隊となっていると指摘された。

 最後に運営委員からは以下のようなまとめがあった。

「これらの我々の活動に大きな示唆をいただいた。米トランプ政権のINF条約からの脱却は、来年のNPT再検討会議において、非常に大きな影響を与えるのではないかと危惧している。現在展開している1000万署名の活動の強化をお願いしたい。今後、被爆者の実相をどのように次世代に伝えていくかが我々の大きな課題である。7月の参議院議員選挙では、投票率が50%に届かない中で、自公が3分の2に迫る議席を得た。今回は政権交代につながる選挙ではなかったが、政権交代なくしては核兵器廃絶なはいと考える。そういうことも含めて我々がそれぞれの地域でやれることを着実にやっていきましょう。」

 
 

被爆74周年原水爆禁止世界大会  広島大会

第1分科会 平和と核軍縮Ⅰ─沖縄で何が、起きているのか

 

日時:8月5日(月)9:30~12:30

会場:ゲバントホール(広島市中区本川町2-1-13和光パレス21  5F/℡082-503-1711)

講師:北上田毅(沖縄平和市民連絡会)、湯浅一郎(ピースデポ共同代表)

◆初参加者は7割程度

 

 ○辺野古新基地建設は頓挫する

 沖縄防衛局が2015年に行ったボーリング調査で、大浦湾には海面下90mに軟弱地盤が広がっていることがわかったが、政府は2019年1月の衆議院本会議で地盤改良工事の必要性を認めるまで3年以上にわたって軟弱地盤の存在を隠し続けていた。講師は、「辺野古新基地建設事業を左右させられることを避けるため、防衛局が意図的に隠ぺいし続けたものだと」指摘。

 地盤改良工事の必要があるのは海面下90m、一方で国内に存在する作業船は海面下70m程度が能力の限界だが、政府や防衛局は「必ずしも固い地盤まで改良しなくてもよい。70mまでの改良でも問題はない」と主張する。講師は「関西空港では地盤沈下対策に5年間で1千億円もの巨費を投じて補修工事を行っている。辺野古には活断層もあり、軍事空港として運用する中で同じように維持工事はできないだろう」と疑問を示す。

 また、「沖縄県知事も再三にわたって変更申請の承認は難しいと示唆している。知事が不承認とした時点で辺野古新基地建設事業は頓挫する」と指摘した上で「民意が示されるたびに強権な姿勢がエスカレートする。土砂が入るほど辺野古の回復は困難になる」とし、新基地建設計画の疑問と反対運動の強化を呼びかけ。

 

 ○生物多様性・非軍事から見て辺野古新基地建設に大儀なし

 世界中の海生哺乳類の約33%が絶滅の危機にある中、沖縄ではジュゴンが激減している。防衛省が辺野古周辺で確認した3頭のジュゴンのうち1頭の死骸が2019年3月に今帰仁村の海岸に漂着しているのが確認され、残る2頭も少なくとも1年程度、生存が確認されていない。

 埋立てのための土砂は、西日本各地の採石場から搬入する計画になっている。しかし、温帯気候である本州と亜熱帯気候である沖縄では異なる生態系であり、外来種の侵入が危ぐされる。砂杭用の海砂も沖縄だけでの調達は不可能で、本州から持ち込まれることが考えらる。海砂採取によって海底の砂に生息している貝などのすみかが奪われ、減少することで生態系や漁業にも影響を与えることが懸念されることから、瀬戸内海に面する多くの県では海砂採取を禁止している。

 講師は「生物多様性・非軍事という観点から見て新基地建設事業は中止しなければならない。また、朝鮮戦争の終結や冷戦構造の解消に向かっていく中、北東アジアで米軍の役割を強化することにつながる新基地建設は時代錯誤。そうした議論になっていくはずだ」と期待を寄せるとともに、「本州の採石場で外来生物の実態調査や、気候帯の違う生態系の移動につながる物資の大量移動をさせない仕組みをつくる必要がある」とした。

 

会場からの質問

○沖縄の砕石メーカー13社のうち1社だけ独占させている、「政府が加担した『犯罪行為』について」。また、北東アジア非核地帯をつくることで、世論として「中国にやられるのでは」ということが出てくると思うが(大阪)

「桟橋を貸すことで反対運動等で迷惑をかけるから、単価を上積みしながら琉球セメント1社のみ独占させている。露骨な官製談合だ。」(北上田)

「『中国にやられる』等といった漠然とした感覚をなくしていくために、外交によって国際法的なものをつくっていくことが重要。」(湯浅)

 ○大浦湾の埋立ては本当にできるのか(千葉)

「砂杭の強度が足りない可能性がある。形の上では工事ができてもその後のことは誰も想像がつかないことが出てくるはず。」(北上田)

 ○沖縄県の対応の甘さもあるのではないか。情報の拡散・発信が少ないのでは(広島)

「県政の柱が辺野古新基地建設反対なのであれば、そのことにつながる一切の事業の許認可については毅然とした対応を求めなければならない。沖縄も少数の活動家で取組んでいる中、全国から支援に来てくれる人達も年々減ってきている。運動も沖縄だけの負担にならないよう、引き続き支援をお願いしたい」(北上田)

 

 

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  「核も戦争もない平和な21世紀に!」―被爆74周年原水爆禁止世界大会・広島大会が8月4~6日の日程で始まりました。
 毎年、最初の行動は「折鶴平和行進」(上写真)。全国を回った「非核平和行進」を受けて、平和公園原爆資料館前に集まった全国の参加者は、横断幕を先頭に、のぼり旗などを持ちながら広島市内を行進。子ども連れの参加者も目立ち、「核兵器を廃絶しよう!」「原発の再稼働は許さない!」「被爆者の支援を!」などと、炎天下にもかかわらず、コールを繰り返しながら、県立総合体育館まで元気に歩きました。

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トランプ・安倍政権へ厳しい批判
 県立総合体育館で行われた開会総会には1900人が参加。原爆犠牲者への黙とうに続き、主催者あいさつに立った川野浩一・大会実行委員長(上顔写真左・原水禁国民会議議長)は「地球上に存在してはならない核兵器がいまだ1万4千発もあり、さらにトランプ米大統領はイランとの核合意やロシアとの中距離核戦略(INF)からの離脱を表明。8月2日にINFは失効した。来年の核拡散防止条約(NPT)の再検討会議も成果が期待できない」と、厳しい情勢を指摘。「特に2017年に国連で採択された核兵器禁止条約に安倍政権は反対し、国内世論も盛り上がっていない。今こそ私たちの運動の真価が問われるときだ」と訴えました。
 松井一寛・広島市長(代理出席)、湯崎英彦・県知事(メッセージ)からの来賓あいさつの後、大会に参加した多数の海外ゲストが紹介され、代表して米国ピースアクションのスージー・アリゾン・リットンさん(上顔写真右)が「核兵器は気候変動と並び世界の人々を恐怖に陥れている」とトランプ政権を批判し、「しかし力による安全保障は真の安全につながらない。全ての人たちの幸せのために連帯して運動を続けよう」と呼びかけました。

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被爆者の実相を伝えよう
 被爆者の訴えを、広島県被団協・被爆を語り継ぐ会の高品健二さん(上顔写真左)が行いました。高品さんは8歳の時に爆心地から2.5キロの所で被爆。「外で遊んでいて青白い光を見たと思ったら、10メートルほど飛ばされていた。父はすでに満州で戦死しており、母も放射線を浴びて1週間後に白血病で亡くなった。残された自分も被爆したことで辛い思いを続けてきた」と経験を語り、最後に「こうした犠牲は私たちを最後にしてほしい。そのため命のある限り語り継ぎ、思いを世界の人たちに届けたい」と述べました。
 毎年、全国の高校生がジュネーブの国連欧州本部を訪れ、核兵器廃絶を訴えている高校生平和大使は、今年は第22代を迎え、広島県内から選出された牟田悠一郞さん、北畑希美さん、松田小春さんが登壇し、代表して牟田さんが「私の祖父が原爆を経験したことから、若い世代がこれからもっと学び、伝えていかなければならない」と決意を述べました(上写真)。
 2011年3月の福島第1原発事故の問題で運動を続ける福島県平和フォーラムの瓶子高裕事務局次長が、7月27日に開かれた原水禁福島大会を報告するとともに、「福島第2原発の廃炉が決定し、県内全ての原発が無くなるが、廃炉までの長い工程や廃棄物問題、さらに被災者の健康と生活再建など課題は山積している」と、さらなる支援を呼びかけました。
 大会の基調を藤本泰成・大会事務局長が行い、核兵器をめぐる世界の状況、核の商業利用(原子力エネルギー)の現状、ヒバクシャ・核被害者への援護と連帯について当面する課題を提起し、「命の尊厳を基本に闘いを前進させよう」と訴えました。大会の基調はこちら
 大会は「原爆を許すまじ」を全員で合唱し、金子哲夫・広島県原水禁代表委員が「被爆の実相という原水禁の原点を学び運動する大会にしよう」と閉会あいさつを行いました。(下写真は合唱する参加者)
 

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  猛暑の中を全国各地から原水禁世界大会広島大会に足を運んでいただきました皆さまに、心から感謝を申し上げます。
 若干の時間をいただき、原水禁世界大会の基調提案を行わせていただきます。

 原爆投下から、広島は74年目の夏を迎えようとしています。被爆者の願いであった「核兵器禁止条約」が122カ国の賛成によって採択されてから2年がたちました。すでに70カ国が署名し、8月2日現在24カ国が批准を済ませています。遠からず条約は発効します。
 日本政府は、条約が米国の核抑止力を否定するとして、署名・批准には後ろ向きです。外務省は、「核に頼らない安全保障を考えていかなくてはならない。その状況を作っていきたい」と答えています。その姿勢は、まさに核兵器禁止条約の署名・批准への姿勢なのです。被爆国日本の政府が核兵器禁止条約の署名・批准を行う。そして非核保有国すべてが批准する。そのことで核抑止のあり方を変えていく。唯一の戦争被爆国日本の政府の役割はそこにあります。
 原水禁は、連合、KAKKINとともに、日本政府に対して核兵器禁止条約の署名・批准を求める「核兵器廃絶1000万署名」をスタートさせました。日本から、非核保有国全てへ、そして核保有国へ、核兵器禁止条約の輪を広げていきましょう。原水禁は、核兵器廃絶1000万署名に全力を尽くします。
 「ストックホルム国際平和研究所」が発表した推計によれば、2019年1月時点の米露英仏中の5カ国とインド、パキスタン、イスラエル、朝鮮を加えた計9カ国が持つ世界の核弾頭数は1万3865発で、米露による削減の結果前年度比で600発の減となっています。
新START、新戦略兵器削減条約は、確実に核弾頭数を減らしています。しかし、一方で同研究所は、核弾頭や発射システム、製造施設など核兵器に関わる総体の近代化が進められているとも指摘しています。
 トランプ政権は、この間、「アメリカ・ファースト」「力による平和」を標榜して、一方的、挑戦的な強硬姿勢を貫き、これまで国際社会が作りあげてきた、核軍縮の枠組みを破壊しています。2018年には、イランとの核合意から一方的に離脱し、イランへの経済制裁を再開しました。混迷をますイラン情勢は、ペルシャ湾・ホルムズ海峡での緊張を生み出し、自ら有志国連合を呼びかけることとなっています。
 今年2月には、ロシアとの中距離核戦力全廃条約からも、ロシアの中距離核開発と条約の制約を受けない中国の中距離核開発を理由に離脱を表明し、8月2日に条約は失効しました。米露間では、今後中距離核開発をめぐって軍拡競争へ突入していく危険性も懸念されます。ヨーロッパ地域や東アジア地域の安全保障にとって、重大な事態を招いています。米国からは、同盟国日本への中距離核の配備要請の声も聞こえ、国是である非核三原則に抵触し、その空洞化すら懸念されます。米露両国は、重要な新STRATの継続の協議も含めて、核保有国の責任として、新たな核兵器削減・廃絶の枠組みの構築に努力しなくてはなりません。
 米トランプ大統領との親密な関係を強調し、日米同盟の深化を提唱する安倍政権は、核搭載可能なF35ステルス戦闘機105機、総額で1兆4000億円もの購入を決定し、ヘリ搭載の護衛艦「いずも」をF35B戦闘機を搭載しての空母への改修、敵基地攻撃を目途にした巡航ミサイルなどの導入を決定しています。
 
 昨年9月には、海上自衛隊は最大級のヘリ空母「かが」を含む護衛艦3隻と潜水艦「くろしお」を南シナ海に派遣し、対潜水艦訓練を目的とした演習を実施しました。ヘリ空母「いずも」と護衛艦「むらさめ」は、今年5月に、米海軍、インド海軍、フィリピン海軍との4カ国共同訓練を南シナ海で実施し、6月には、同じ南シナ海海域で、原子力空母「ロナルド・レーガン」を中心とする空母部隊との共同訓練を実施しています。米国や英国も駆逐艦などを派遣し「航行の自由作戦」を展開し中国と対立するきわめて緊迫した海域での訓練は、極めて異例です。
 安倍政権は、一帯一路政策を推進する中国を仮想敵として、インド太平洋構想を提唱し、米軍と一体となった軍事行動を展開しています。米国は、第2次大戦後も「世界の警察」を自任しながら、自らの覇権かけて、世界各地で地域紛争に介入しつつ、自ら戦争をひき起こしてきました。安倍政権の「日米同盟基軸」の姿勢と「積極的平和主義」の考えは、日米一体となった「日米統合軍」をつくり出し、自ら積極的に米国の覇権に協力することを確実にしています。
 このような情勢を受けて、沖縄県名護市辺野古では、在日米軍海兵隊の新基地の建設が強行されています。県知事選挙、各国政選挙、そして今年2月の辺野古埋立の賛否を問う県民投票、様々な形で示された沖縄県民の辺野古新基地建設反対の意志は、安部政権の建設強行に踏みにじられ、もはや沖縄には民主主義、憲法がないと言うほどの事態を引き起こしています。私たちは、沖縄県民とともに、核のない、基地のない沖縄をめざしてとりくまねばなりません。 
 G20大阪サミット後の6月30日に、韓国を訪問したトランプ米大統領は、軍事境界線上の板門店において、出迎えた金正恩朝鮮国務委員長と約50分間にわたって会談しました。会談の中で、今年2月のハノイでの会議以降途絶えていた朝鮮半島の非核化への実務者協議を、再開することで合意をしています。

 朝鮮半島の非核化に向けての議論は、一朝一夕に進むものではありません。米朝間もしくは中国を加えて、朝鮮戦争の終結、平和協定の締結、さらには東北アジア非核地帯構想の実現に向けて進み出すこと、段階的な非核化へのプロセスとそれに伴う制裁措置の解除、話し合いの進展のために連絡事務所の開設など、信頼感を高めながらひとつ一つの課題を克服していく粘り強い努力が必要です。早期の実務者協議の再開が待たれます。
 朝鮮半島情勢が進展する中にあって、制裁の強化に固執してきた安倍首相は、この間、存在感を示すことができないできました。重要課題としてきた拉致問題さえも、米朝首脳会談に託すこととなっています。情勢を打破すべく、安倍首相は突然、朝鮮に対して「無条件の対話」を提起しました。朝鮮政府は、「朝鮮への敵視政策は少したりとも変わっていない」と突き放しています。
 安倍政権は、2002年の「日朝平壌宣言」に立ち返って交渉を開始すべきです。日本国内における、高校無償化からの排除に象徴される在日コリアンへの差別の解消や在朝被爆者への援護開始、国交回復後の拉致問題の解決などを前提としつつ、朝鮮敵視の政策を転換し、まずは連絡事務所の相互開設などによって相互信頼の醸成にとりくみ、対話の中で国交の正常化をめざすべきです。朝鮮敵視政策を継続する安倍政権は、21世紀の東アジア社会での自らの立場を誤っています。
 次に、原子力エネルギーをめぐる現状と福島の今について提起したいと思います。
 雑誌「世界」の2019年7月号、「原子力産業の終焉」と題した特集において、原子力アナリストのマイケル・シュナイダーさんは、原子力発電所の現状について、世界の商業用電力ミックスにおける原子力の割合は、1996年以来17.5%から10%に低下し、様々な要因から原発はもう市場での競争力を失っていると指摘しています。
 安倍政権がアベノミクスの重要な柱に位置づけてきた、日本の原発輸出政策は、インド、ベトナム、トルコ、イギリス、ヨルダンで、全てが頓挫・失敗・撤退しています。安全対策などによる原発建設コストの増大は、原発を市場経済から閉め出す方向に動いています。
 東芝、日立製作所、三菱重工の日本を代表する原発メーカーが、政府方針とともに原発建設に拘泥するならば、企業の将来にも、日本経済にも暗雲をもたらすでしょう。原発輸出を基本政策としてきた安部政権の責任は重大です。
 原水禁は、原子力の商業利用にも、一貫して反対してきました。福島第一原発事故に際しては、大江健三郎さん、瀬戸内寂聴さんなどの9人の呼びかけ人と、様々な市民の皆さんの協力を得て、「さようなら原発1000万人アクション」の運動を展開し、「脱原発・持続可能で平和な社会をめざして」の声を上げ続けてきました。私たちの知る限り、脱原発の世論は圧倒的多数を示しています。これほど世論と政治の乖離が大きい政策はありません。
 事故を起こした福島第一原発の現状は、極めてきびしいものがあります。事故収束までの費用を経産省は21兆5千億円と見積もっていますが、70兆円などとの試算も出ており、今後の見通しは全く立たずにいます。
 高線量の放射能に阻まれて、溶融した核燃料は手つかずのまま、冷却を続けるしかない状態で、汚染水はたまり続けています。作業の長期化は避けられません。福島県内には、汚染水のみならず、瓦礫、伐採木、防護服などの焼却灰、そして除染によって出された汚染土など、様々な放射性物質に汚染されたものが、未だに住環境のすぐ側に積み上げられています。事故収束作業や様々な場面で労働者がヒバクする事態は避けるべきであり、何よりも暮らし続ける市民の環境をこれ以上汚染することは許されません。

 福島県は「県民健康調査」において、福島原発事故当時、概ね18歳以下であった子どもたちに甲状腺(超音波)検査を実施してきました。2019年 3月末現在、2018年末より 6人増えて218人が甲状腺がんまたはがんの疑いとされ、174人が手術を受けています。甲状腺評価部会は「現時点で、放射線被ばくとの関連は認められない」としていますが、甲状腺がんを始めとする健康リスクは、原発事故がなければなかったのです。
 国は事故の責任を認め、被爆した人々の医療支援や精神的ケアに全力を尽くすべきです。浪江町や飯舘村では「健康手帳」のとりくみがすすめられています。広島・長崎の被爆者、そして原水禁運動が、長い闘いの中で勝ち取った、原爆被爆者健康手帳と同様の法整備を、国の責任として進めなくてはならないと考えます。
 被災地福島では、8年余経った今も県内に1万1,084人、県外に3万 1,608人、避難先不明者も含めて合計4万2,705人が、長期の避難生活を余儀なくされています。
 政府は、法律で定められている年間被ばく限度1mSvに従わず、国際放射線防護委員会が定めた、重大事故時の被ばく基準を勝手に適用し、法の定めの20倍もの被ばく量を、避難指示を解除した地域の住民に押しつけています。
 避難指示解除に合わせて、住宅支援、精神的賠償などの支援を次々に打ち切り、被災者が帰らざる得ない状況を作り出しています。避難指示解除区域では、医療や介護、日常生活に必要な各種インフラやサービスは全く不十分なままで、居住率は25%程度、高齢化率は、事故前の27.3%から44.3%に上昇しています。
 国は、「風評払拭・リスクコミュニケーション強化戦略」を策定し、福島事故では放射線の被ばくによる健康影響は今後もなく、福島は復興しつつあるとし、事故被害者を切り捨て、原発再稼働を推し進めようとしています。
 復興庁作成の「放射線のホント」や文科省が全国の小中高校に配布した「放射線副読本」などは、放射線のリスクを矮小化し、誤った知識を持って原発の稼働を許そうとするものです。将来のエネルギー政策を選択する権利を持つ者に対して一方的な意見を押しつけることが許されるわけがありません。風評払拭と言う言葉を利用して、フクシマを亡きこととし、原発推進をすすめる環境づくりを許してはなりません
 政府は、電力会社は、目先の利益のみを追求し、膨大な投資を行い、原発の再稼働をすすめようとしています。経団連は、原発を基本とした将来のエネルギー政策を提言し、国の第5次エネルギー基本計画には入れることができなかった原発の新設も、要求しています。中国電力は、地元広島に近い上関原発の埋め立て申請許可の延長を求めるなど、原発新設に前のめりの姿勢を見せています。フクシマの現状を見たとき、第一原発の前に立ったとき、なぜ、原発を将来のエネルギーとして選択できるのか、理解できません。全ての状況が、全ての数字が、「脱原発」を選択していることは明らかです。
 死を目前にする兵士の心情を描いた「桜島」で著名な小説家、梅崎春生は、「どのみち死なねばならぬなら、 私は、なっとくして死にたいのだ」と述べています。1945年8月6日、瞬時に奪われた命は、何を思うのでしょうか。「納得」と言うならば、納得すべき何ものもなく死に見舞われた者は、何を思うのでしょうか。
 広島大会に先立つ福島大会で、多くの原発事故被災者に「ふるさとの喪失感」が伴うとの話を聞きました。故郷を奪われたことを、どう自らに納得させるのか、その困難が、喪失感を生んでいくのでしょうか。
 命と命に付随する人間の全てを、私たちは決して「納得」せずには奪われない。その権利を持っていることを、改めて確認したいと思います。そして、そのことを原水禁の基本に据えて、更なる運動の展開をめざそうではありませんか。
 その決意を申し添えて、被ばく74周年原水禁世界大会の基調提案といたします。
 

 

201982

 

中距離核戦力(INF)全廃条約失効に関する事務局長談話

 

原水爆禁止日本国民会議

事務局長 藤本泰成

 

 米露の二国間で交わされていた「中距離核戦力(INF)全廃条約」が、82日失効した。今年2月に米国は、ロシアが条約に反して中距離核の開発を進めているとして、条約からの離脱を表明して以来、ロシアと対立したまま条約が定める失効日を迎えた。核兵器禁止条約が採択され、徐々に署名・批准する国が増加し、核兵器廃絶への声が高まった中で、中距離核戦力(INF)全廃条約の失効の影響は大きい。「核なき世界」を希求してきた国際的機運の後退が懸念される。

 INF全廃条約は、東西冷戦の中1987128日に、米国とロシア(旧ソ連)の間で調印され、条約が定める期限(1991年)までに、米露双方の中距離核戦力は全廃された。ヨーロッパ社会の安全保障にとってきわめて重要な条約であったことは間違いない。米トランプ政権は、条約に参加しない中国も含めて新たな核軍縮の枠組みをと提言したが、この間そのような状況が動き出したとは聞かない。一方的な離脱と提言からは、何も生まれてはいない。

 「核なき世界」を提唱した米オバマ前政権の政策から一変して、米国トランプ政権は、自国第一主義と力による平和を標榜して、他国に対して様々な圧力をかけ続けてきた。昨年のイランの核合意からの離脱は、ペルシャ湾ホルムズ海峡の不安定化をもたらし、自ら世界各国へ有志国連合への参加を呼びかけるものとなった。INF条約やイラン核合意からの離脱は、その象徴的なものである。これまで世界が長い間地道に積み上げてきた、平和と核兵器廃絶への枠組みを、米トランプ政権が一方的に破壊していくことは絶対に許されない。2021年には、新戦略兵器削減条約(新START)が期限を迎える。更なる削減に向けて米露両国は、条約の延長に向けた交渉をすみやかに開始すべきだ。

 米トランプ政権は、核政策の見直し(NPR)において、地域を限定して使用可能とする核弾頭の小型化や通常兵器の攻撃に対して核の使用を可能とするなど、核攻撃能力の強化を狙っている。自らが核に依存する一方で、朝鮮民主主義人民共和国に対して核政策の放棄を要求している。自らの強力な軍事力を背景にして、思うがままに主張していく米国の姿勢が世界平和をつくりあげるとは決して言えない。一方的で独善的な圧力は、予期せぬ事態を誘発していく可能性がある。

 日本政府も、日米同盟の深化を標榜し、米国の核抑止に依存し核兵器禁止条約の署名・批准に否定的な姿勢を崩さない。唯一の戦争被爆国を標榜する日本の姿勢とは、到底言えるものではない。

 2020年に控えたNPT再検討会議に向けて、米国を中心とした核兵器保有国は、核兵器廃絶へ向けた確固たるアプローチの再構築をめざさなくてはならない。日本は、そのためのイニシアチブを確立しなくてはならない。原水禁は、原水禁世界大会を前に、「核絶対否定」の原則の下、核兵器廃絶の声を後退させることなく、全力でとりくんでいく。

 

 

 

 

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