日常生活に欠かせない存在となったスマートフォンは、インターネット検索やメモ機能、高画質のカメラなど多彩な機能を備えています。そのスマホと切っても切れない存在が、イヤホンやヘッドホンではないでしょうか。
MMD研究所が23年4月に公表した、18歳~69歳の7000人を対象にした調査によると、イヤホン・ヘッドホンは67.6%が持っていました。最近は無線が主流となりつつあり、ケーブルの煩わしさが軽減されています。さらに、一部のワイヤレスイヤホンでは、ノイズキャンセリング機能や会話検知といった様々な高度な機能を兼ね備えています。
スマホから音楽を聴いたり、通話したりする際に非常に便利なイヤホンですが、その使用に伴うリスクも存在します。特に、自転車の運転中の事故が増加していることが指摘されています。
警察庁がまとめた自転車関連交通事故の状況によると、22年度の自転車関連事故件数は、69,985件で全交通事故の23.3%となっています。事故件数が10万件を越していた14年度以前と比べると減少しているものの、自転車関連が交通事故に占める比率では増加傾向にあります。また、事故の半数は39歳以下の若い世代が起こしており、イヤホンを装着しての運転による事故も多くみられます。中には、イヤホン使用中の事故で被害者を死亡させてしまったケースも確認されており、その危険性は深刻なものです。
こうした中で、各自治体ではイヤホンを使用しながらの運転に対して条例を制定するようになっています。たとえば、東京都や神奈川県、千葉県では5万円以下の罰金が課せられる条例が設けられています。条例だけでなく、事故を防ぐためのさまざま啓発活動も、国をはじめ各自治体や民間企業で行われています。例えば、全日本交通安全協会では、自転車安全教育特別指導員の講習会や子供自転車全国大会などを開催しています。国交省ホームページでも8団体の取組が紹介されています。
イヤホンを使用しての自転車の走行は、決して新しい問題ではありません。ただ、街中ではシェアサイクルも普及し、自転車が以前にも増して身近な交通手段となっています。だからこそ、イヤホン使用がもたらすリスクを一層深刻に受け止めるべきだと思います。他者の命を奪ってしまう可能性があることを念頭に置き、イヤホン走行に対する取締りを強化し、さらなる安全対策を講じる必要があるのではないでしょうか。
【参考記事】
7日付 日経新聞 朝刊 26面(12版)「電動自転車の改造横行 『こがずに自走』は原付き扱い 無免許で摘発も(社会)」
【参考資料】
MMD研究所「イヤホン・ヘッドホンの所持率は67.6%、メイン利用は『完全ワイヤレス』が34.2%でトップ利用の完全ワイヤレスイヤホン上位は『apple』『Sony』『Bose』(23年4月19)」