新卒で入社した会社で、先輩女子社員に酷い目に遭わされた。
その先輩女性社員Kさんは、私の3歳上。女優の南果歩に似たシジミ目。
とにかく仕事をしない人で、協同でするはずの作業も八割以上は私に投げっぱなし。
あまりのハードワークに先輩社員に相談したら、創業者一族の遠戚(コネ)だから、我慢するしかないと諭され…
就職して二年半で胃に穴が空き、腹膜炎を起こしかけて電車で倒れて救急車搬送→緊急手術→入院。
自宅療養中にパニック障害その他諸々の症状が出たので退職した。
うちは、祖父と兄が不動産屋を経営し、
父と姉が不動産管理会社をやっている。
私は、管理会社の方で働かせてもらうことにした。
その後、中学の同級生と26歳で結婚。子供も2人産まれて、忙しいが平和な日々だったのだが……
私が30代なかばになった頃、祖父の不動産会社が管理するマンションに新規入居者が入ってきた。
あのKさんと旦那さんだった。
私が朝、共同集積所からマンションの前にゴミをえ○ちらおっちら運んでると、後ろから声。
「あら! 私さんじゃないの! あら、どうしたの?」
Kさんは、意地悪な笑みをニヤァーッと。
私が作業着を着て、ゴミを通りまで運んでるのを見て、嬉しそうに
「あらあら、お仕事中なの? ご苦労様ね。うちのゴミもお願いね。がんばってー」
二十代の頃の私だったら、その場で固まっていたか、うろたえていたかもしれない。
しかし、私も子供を二人産んで、強くなっていた。
「おはようございまーす! このマンションに引っ越してらしたんですねー!」
会社勤めだった時と大違いの、私の大声にKさんは驚いていたようだった。
その後、会社時代の同僚に久々に連絡をとってみたところ、
Kさんが33歳の時に、会社はリストラを始め、Kさんは社長から見合いを勧められて渋々承諾。
12歳年上の、同郷の男性と結婚して退職したのだという。
その時は「へー」と納得。(3LDK中心で18万円/月の高級マンション)
管理会社の仕事には、エントランスや廊下の掃除がある。
Kさんの入居したマンションはオートロックで、外にポスト、内側に取り出し口。
内側の取り出し口そばにはゴミ箱があり、そこに不要のチラシなどを捨てられるようになっている。
ゴミ箱はそのまま捨ててもいいのだが、一応、中を確かめることになっていた。
チラシにまぎれて、重要な書類を捨ててしまう入居者さんもいるからだ。
ある日、ゴミ出しを終え、そのポスト用ゴミ箱をチェックしていた時、Kさん宛の封筒を見つけた。
不妊治療専門のクリニックからのもの。
(ああ、Kさん、不妊なんだ。もう30代後半だもんな)
私は(復讐のチャンスだ)と思った。
まず、私は、ネットで霊感商法系のサイトを探しまくった。
子宝に恵まれる祈祷とか、水仔霊の因縁を解くとか、その手のやつ。
で、Kさんの名前で、その手の霊感業者に十通以上の資料請求をした。
それから一週間もしないうちに、ポスト用ゴミ箱に、Kさん宛の「その手」の封筒が何通も捨てられ始めた。
あの手の業者に連絡すると、名簿みたいなのが回るらしく、私が請求してない業者からのものも来た。
薄いものは破られたりしてたが、そのままのものは、もう一度、Kさん宅のポストに投函した。
面白くなってきた私は、幸運グッズの業者にも、Kさんの名前で十通以上の資料請求。
これまた、カタログや資料がガンガン来ていた。
資料請求から3週間ぐらいして、Kさんのお宅に消火器点検の名目で訪問すると、Kさんは目にくまをつくっていた。
そして、私は祖父と父、兄と姉に提案をした。
「町内会のお祭りとは別に、うちの管理してるマンションのお子さんたちに
ひな祭りやこどもの日、ハロウィンなどでお菓子を配るのはどうだろう」と。
子供好きの祖父と父は大賛成、兄と姉も町おこしならぬマンションおこしは面白いと賛成。
表玄関前が広く、小さな公園が隣接してるので、イベントをやりやすいと理由をつけ、
Kさんの住んでるマンションの前にイベントテントを張り、お菓子配り場にした。
お菓子を貰いに、うちが管理してるマンションの小学4年生以下の子たちが集まった。
うちの娘や息子は、配るイ系りさんとして手伝った。
Kさんは、イベントでキャッキャッと喜ぶ子どもたちを見て、複雑な表情をしていた。
不動産情報誌にそのイベントの記事が紹介され、うちの管理するマンションには子連れ家族が増えた。
私は、なるべくKさんの住んでるマンションに子供がいる家族が入居できるよう、祖父を説得した。
顔を見るたび、Kさんの表情が暗くなっていくのが楽しくてたまらなかった。
Kさんが引っ越してきてから1年半ほどして、弱ったKさんから「部屋でお茶をしないか」と声をかけられた。
私は仕事の合間に「30分だけ」とKさんの部屋におじゃました。
Kさんからは「もう40歳になるのに子供が出来ない」と半泣きの愚痴を聞かされた。
私は超ポジティブに励ましに励ました。
「諦めちゃダメですよ!
Kさんは出来ます、頑張って!
子供なんて、数撃ちゃ当たるもんです!
諦めずに頑張らなくっちゃ!
子供って可愛いですよ!
どんなに大変に思えても、どんなに苦労しても、
子供の笑顔で全て忘れられるんです!
子供のいない人生なんて考えられませんよ!
私はどれだけ子供たちに助けられてることか!
Kさんの子供だったら、きっと可愛いですよ!
羨ましいなあ!」
そんなことばっかり笑顔満面で、無駄に元気よくぶちかました。
Kさんは、それから2年半後に引っ越した。
離婚したらしい。
引越の手続きに来たKさんは、げっそり痩せて、どす黒い顔をしていた。
ああ、私の復讐は済んだな、と思った。
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